春の花の季語今回は樹木、木に咲く花の第三回です。
花の色が黄色い種類を集めました。
それぞれの種類に白、ピンク色など違った色の花もある種類が多いので、ここにない場合は他の色のページもご覧ください。
なお梅、桜に関する季語は、それぞれ春の梅の季語、桜の季語・植物、桜の季語・その他をご覧ください。
春の草花・白
春の草花・ピンク、赤
春の草花・青、紫
春の草花・黄色、オレンジ、その他
植物
山茱萸の花(さんしゅゆのはな)
初春
ミズキ科の落葉小高木で、早春に葉が出る前に、黄色い小さな花が密集して咲く。
その様子から春黄金花(はるこがねばな)と呼ばれる。
秋には赤い実がなるので、秋珊瑚(あきさんご)という。
中国・朝鮮半島原産で、享保年間に薬用植物として伝わったといわれる。(実が薬用とされる。)
日本では観賞用として茶庭に好んで植えられる。
- 山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ 水原秋桜子
- さんしゆゆの花のこまかさ相ふれず 長谷川素逝
- 山茱萸と知りてはなるる月の中 加藤楸邨
黄梅(おうばい)
初春
モクセイ科の落葉低木で、梅の仲間ではない。中国原産。
枝垂れた緑色の枝から、葉の出る前に黄色い六弁の小さい花を咲かせる。
盆栽や鉢植えなどによく用いられる。
- 黄梅に佇(た)ちては恃(たの)む明日の日を 三橋鷹女
- 川筋に黄色が飛びて迎春花 中西舗土
ミモザ
初春
オーストラリア原産のマメ科アカシア属の常緑高木で、黄色い球状の香りのある小さい花が集まって咲く。
銀葉アカシア、フサアカシア、ミモザアカシアなど。
夏の季語の「含羞草(おじぎそう)」の傍題に同じ「ミモザ」がありますので、その場合は含羞草のことを指します。
- ミモザ咲き海かけて靄(もや)黄なりけり 水原秋桜子
- ミモザ咲く海風春をうながせば 富安風生
- 花ミモザ修道女われにふりむかず 下村梅子
三椏の花(みつまたのはな)
仲春
中国原産のジンチョウゲ科落葉低木で、早春に黄色の花を咲かせる。
幹の皮の繊維が、和紙の原料となる。
枝が常に三本に分かれることから名付けられた。
花は黄色い筒状で、枝の先に集まって球状になる。
- 三椏の花に光陰流れ出す 森澄雄
- くり盆を買ふ三椏の花曇 野澤節子
- 山の娘は花三椏に手鞠つく 星野半春
- 三椏咲くや民家まで来し神の鹿 池上樵人
連翹(れんぎょう)
仲春
中国原産のモクセイ科の落葉低木。細く長く伸びた枝に、三月ごろに鮮やかな黄色の花をつける。
江戸時代に渡来し、現在では全国で広く庭や公園に植えられている。
- 連翹のまぶしき春のうれひかな 久保田万太郎
- 連翹に月のほのめく籬(まがき)かな 日野草城
- 連翹や田水を叩く海の雨 齋藤美規
土佐水木(とさみずき)
仲春
土佐(高知県)の山地に自生する落葉低木。
三月から四月に、小さく淡黄色の花が穂状に垂れて咲く。
- 峡空(かひぞら)の一角濡るる土佐みづき 上田五千石
- 土佐みづき箱根細工を刳る音す 水原秋櫻子
- 天上に筬音(をさおと)のあり土佐みづき 沢田明子
山吹(やまぶき)
晩春
バラ科ヤマブキ属の落葉低木。晩春に五弁の黄色い花を咲かせる。
緑色の細い茎が叢生して1.5から2メートルほどになる。
白花のものを白山吹(シロヤマブキ属、花弁は4枚)、八重咲きのものを八重山吹という。
八重咲きのものにはほとんど実がならない。
イギリスではJapanese rose、日本のバラと呼ばれる。
太田道灌の故事で有名な山吹の里は、埼玉県越生市と伝えられている。
日本全国、また中国に分布している。庭木としても用いられている。
古来よりよく歌に詠まれてきた。
山振(やまぶき)の立ち儀(よそ)ひたる山清水酌みに行かめど道の知らなく
高市皇子 万葉集巻二
- ほろほろと山吹散るか滝の音 芭蕉
- 山吹のほどけかかるや水の幅 千代女
- 山吹や根雪の上の飛騨の径 前田普羅
- 雨脚の舞つてゐるなり山吹に 清崎敏郎
金縷梅(まんさく)
初春
マンサク科の落葉低木。
二月から三月ごろ、黄色のねじれた細いひも状の四弁花を、枝にびっしり咲かせる。
日本各地の山地に自生する。
花弁が紅色になるアカバナマンサクもある。
- まんさくや小雪となりし朝の雨 水原秋桜子
- まんさくに滝のねむりのさめにけり 加藤楸邨
- マンサクを夜明けの花と見て居りぬ 中西舗土