春の花の季語今回は樹木、木に咲く花の第二回です。
花の色が白い種類を集めました。
それぞれの種類にピンク色や違った色の花もある種類が多いので、ここにない場合は他の色のページもご覧ください。
なお梅、桜に関する季語は、それぞれ春の梅の季語、桜の季語・植物、桜の季語・その他をご覧ください。
春の草花・白
春の草花・ピンク、赤
春の草花・青、紫
春の草花・黄色、オレンジ、その他
春の季語一覧
植物
辛夷(こぶし)
仲春
モクレン科の落葉高木、日本原産。
三月から四月にかけて、白い香りの良い六弁花を枝先に咲かせる。
花は、白木蓮(中国原産)よりも小さめで、白木蓮が上向きにチューリップのような形で咲くのに対して、辛夷はさまざまな向きに大きく花びらを開くように咲き、花の下には一枚葉がついている。
幣辛夷(しでこぶし)はヒメコブシともいわれ、花びらが細く枚数が多い。
開花が田打ちの時期であることから、田打桜ともいわれる。
また、「辛夷」は中国では木蓮のことを指す言葉である。
蕾を乾燥させたものは辛夷(しんい)として漢方薬として用いられる。
- 降りしきる雪をとゞめず辛夷咲く 渡辺水巴
- 君が門こぶし花さくうす月夜 中勘助
- わが山河まだ見尽さず花辛夷 相馬遷子
- 星空に幾夜夢みる白辛夷 高室呉龍
- 遠目にも白こそ風の辛夷なれ 野見山朱鳥
花水木(はなみずき)
晩春
北米原産の落葉高木で、四月から五月に白やピンク色の総苞を開き、中心に黄緑色の小さい花をつける。
明治四十五年に、当時の東京市長尾崎行雄がワシントンに桜を三千本贈り、その返礼にとアメリカは大正四年に花水木を東京市へ寄贈。日米親善の歴史を物語る花木となっている。
- 一つづつ花の夜明けの花みづき 加藤楸邨
- 花水木女ふたりの歩を合はす 有馬静子
山桜桃の花(ゆすらのはな)
晩春
バラ科の落葉低木。淡紅色から白の花を咲かせる。
花は梅に似ていることから、ゆすらうめとも呼ばれる。
新葉が出ると同時に、五弁花の花が咲く。
(六月ごろに真っ赤な実がつき、夏の季語となっている。)
- 万両にゆすらの花の白き散る 正岡子規
- 飛鳥風ゆすらの花の岡べかな 松瀬青々
- 裏木戸に佇むひとや花ゆすら 牧田季子
桜桃の花(おうとうのはな)
晩春
バラ科の落葉高木。佐藤錦などで有名なさくらんぼが実る木の花。
四月から五月にかけて、白い五弁花を咲かせる。
寒さに強く、北国の果樹園に多く植えられている。
- 蕎麦くふや桜桃の花咲く頃の 森澄雄
馬酔木の花(あしびのはな)
晩春
日本原産のツツジ科の常緑低木。
四月から五月にかけて、白い壺型の花を房状につける。
枝葉に有毒成分が含まれていて、馬が食べると酔っ払ったようになるというのでその名がある。
白花のほか、淡紅色の花、また葉が斑入りのものがある。
- 馬酔木咲き野のしずけさのたぐひなし 水原秋櫻子
- 中尊寺道白珠の馬酔木咲く 秋元不死男
- 月よりもくらきともしび花馬酔木 山口青邨
- 馬酔木野の夕日幼な名もて呼ばれ 丸山哲郎
- 花馬酔木掌にさやさやと音たちぬ 小間さち子
満天星の花(どうだんのはな)
晩春
ツツジ科の落葉低木。四月ごろにスズランに似た白い小花を鈴なりに咲かせる。
庭木としてもよく植えられ、丸く刈り込まれたり、生垣に用いられたりする。
赤い花の種類もある。
枝は細く、一箇所から三本以上に枝分かれしていることが多く、その形が結び灯台の足に似ているところから「どうだん」と呼ばれるようになった。
秋には鮮やかに紅葉する。
- 満天星に突抜けてある木曽の空 波多野爽波
- 満天星や歩み初む子に守り鈴 三沢今代
山楂子の花(さんざしのはな)
晩春
バラ科の落葉低木。四月から五月にかけて、梅に似た白い小さい花を咲かせる。
中国原産のものが渡来した享保年間には薬用としていた。
現在では観賞用として植えられている。
同属の西洋山査子はメイフラワーと呼ばれる。
- 思ひ凝らせば山査子に日の戻りくる 手塚美佐
小粉団の花、小手毬の花、小手鞠の花(こでまりのはな)
晩春
中国原産のバラ科の落葉小低木。
四月から五月頃、白い小花が毬状になって垂れるように咲く。
「すずかけ」と呼ばれることもある。(別種で、街路樹のプラタナスもすずかけといいます)
- こでまりや上手に咲いて垣の上 嵐弓
- 小でまりの花に風いで来りけり 久保田万太郎
- こでまりのたのしき枝のゆれどほし 轡田進
雪柳(ゆきやなぎ)
晩春
バラ科の落葉低木。高さ1、2メートルで、細く枝垂れた枝にびっしりと白い小さい花を咲かせる。
一つ一つの花はごく小さい白い五弁花で、全体で見ると雪が降りかかっているように見える。
- ちればこそ小米の花もおもしろき 莫二
- 雪柳老の二人に一と間足り 富安風生
- 雪柳花みちて影やはらかき 沢木欣一
- ゆふづつや風のはつかに雪柳 石川桂郎
(ゆふづつ、夕星・長庚…宵の明星(日没後の西の空で明るく見える金星))
木蓮(もくれん)
仲春
中国原産のモクレン花の落葉低木。
花は外側が暗紫色、内側が白色。大きい肉厚の六弁花を、上向きに半開きに咲かせる。
その色から紫木蓮とも呼ばれる。花は同一方向を向く習性がある。
花の白いものは白木蓮で、中国原産のモクレン科落葉高木で、高さが10メートル以上にもなる。
白木蓮も花びらが6枚だが、3枚ついている萼が花びらにそっくりなので、花びらが9枚に見える。
モクレン属はアジアや北アメリカに広く分布しており、発見された化石から一億年以上も前から生息していたことが判明している。
- 木蓮に日強くて風さだまらず 飯田蛇笏
- 木蓮に白磁の如き日あるのみ 竹下しづの女
- 木蓮のつぼみのひかり立ちそろふ 長谷川素逝
李の花(すもものはな)
晩春
中国原産のバラ科の落葉小高木。
三月から四月にかけて、新葉と同時に白い小さな五弁花を咲かせる。
果実は酸味が強く、酸っぱい桃という意味から名付けられた。
- 雪の如く李吹きちる厩かな 島田五空
- 放縦に背戸の李の花盛り 相馬遷子
- 多摩の瀬の見ゆれば光り李咲く 山口青邨
巴旦杏の花(はたんきょうのはな)
晩春
李の改良種で、果実用に栽培される。同じような白い花をつける。
ピンク色の花をつけるアーモンドも同じく「巴旦杏」と呼ばれるが、別種である。
- 巴旦杏咲く山家訪ふゆかりあり 勝又一透
梨の花(なしのはな)
晩春
バラ科の落葉高木。四月から五月にかけて、白い五弁花をつける。
果樹として低木に仕立てられる。実は秋の季語。
- 川の洲に晒の白や梨の花 淡々
- 朝雨や簾ごしなる梨の花 白雄
- 大いなる月の暈あり梨の花 高浜虚子
- 棚の梨咲くや水田も漲(みなぎ)りて 篠田悌二郎
杏の花(あんずのはな)
晩春
中国原産のバラ科の落葉小高木。
四月ごろ、白または淡紅色の、梅に似た五弁花を咲かせる。
主に果樹として栽培される。
八重咲きのものは花杏と呼ばれて実がならず、観賞用となる。
- 一村は杏の花に眠るなり 星野立子
- 花杏旅の時間は先へひらけ 森澄雄
- 母死後の目に一杯の花杏 岸田稚魚
林檎の花(りんごのはな)
晩春
バラ科の落葉高木。
寒地で栽培され、四月から六月に、白い五弁花を咲かせる。
つぼみは紅色。実は晩秋の季語である。
- 風軽く林檎の花を吹く日かな 富永眉月
- 夢のいろのうす紅や花りんご 及川貞
- 対岸にゆれて着く舟林檎咲く 加藤憲曠
榲桲の花(まるめろのはな)
晩春
中央アジア原産のバラ科の落葉高木。
葉が出たあとの五月に、薄紅色を帯びた、木瓜に似た白い五弁花を咲かせる。
秋に香りの良い洋梨の形の実をつける。
- マルメロの花咲き遠く吾は来し 山口青邨
山梨の花(やまなしのはな)
晩春
バラ科の落葉高木で、日本の梨の原種とされる。
山地に自生し、四月に新葉とともに小さな白い五弁花を咲かせる。
実は小さく、酸っぱく渋い。
褐色の実のなる赤梨系と、緑色の実をつける青梨系がある。
- 山梨の花まづ白く峡(かひ)夜明 福田蓼汀
- 風に乗る山梨の花なつかしく 渡辺政子