先日、水辺近くの木立の中で、トンボを見つけました。
葉っぱの先でおしりをピンと立てて、じっとしています。
カメラで写しながら近くまで寄っても、全然逃げようとしません。
私は普段お花ばかり撮影しているので、花にやってくる蝶々やミツバチはよく撮るのですが、トンボは数回しか撮ったことがありません。
これはチャンスと、たくさん撮ってきました。
家に帰ってから、何というトンボだろうと調べてみました。
羽の先が黒くなっていることと、腹の部分の模様を確認。
どうやら赤とんぼの一種で「コノシメトンボ」のメスのようです。
赤とんぼといっても、赤くなるのはコノシメトンボのオスだけで、メスはこのままの色で赤くはならないそうです。
日本全国でよく見られる種類で、あまり逃げずにじっとしていることが多く、観察しやすいとのこと。納得です。
ちなみにトンボがおしりを立てて逆立ちのような姿勢で止まっているのは、暑い時に直射日光を受ける面積を減らし、体温の上昇を防いでいるそうです。
「蜻蛉(とんぼ)」は秋(三秋)の季語です。
傍題には種類や呼び名が多数あります。
蜻蜓(やんま)、鬼やんま、銀やんま、ちゃん、渋ちゃん(しぶちゃん)、腰細やんま(こしぼそやんま)、黒やんま、更紗やんま(さらさやんま)、青蜻蛉(あおとんぼ)、塩辛蜻蛉(しおからとんぼ)、塩屋蜻蛉(しおやとんぼ)、塩蜻蛉(しおとんぼ)、麦藁蜻蛉(むぎわらとんぼ)、麦蜻蛉(むぎとんぼ)、猩々蜻蛉(しょうじょうとんぼ)、虎斑蜻蛉(とらふとんぼ)、高嶺蜻蛉(たかねとんぼ)、こしあき蜻蛉、墨蜻蛉(すみとんぼ)、胡黎(きやんま)、精霊蜻蛉(しょうりょうとんぼ)、仏蜻蛉(ほとけとんぼ)、赤蜻蛉(あかとんぼ)、秋卒(あかえんば)、秋茜(あきあかね)、深山茜(みやまあかね)、眉立茜(まゆたてあかね)、のしめ、のしめ蜻蛉、八丁蜻蛉(はっちょうとんぼ)、蝶蜻蛉(ちょうとんぼ)、腹広蜻蛉(はらびろとんぼ)、
夕蜻蛉(ゆうとんぼ)、山蜻蛉(やまとんぼ)、昔蜻蛉(むかしとんぼ)、あきつ、えんば、えんま、とんぼう、蜻蛉釣(とんぼつり)
「のしめ蜻蛉」がありますね。写真のコノシメトンボは、このノシメトンボの小型です。
のしめ(熨斗目)とは着物の模様の一種なのですが、このトンボの羽の先が褐色になっているところが似ているからという説と、腹部の模様が似ているからという説があるそうです。
また、同じ秋の季語に「蜉蝣(かげろう)」があります。
蜉蝣の別名に「正雪蜻蛉(しょうせつとんぼ)」があり、また蜉蝣の一種に「斑蜻蛉(まだらとんぼ)」、「白腹蜻蛉(しろはらとんぼ)」があります。
また、糸蜻蛉(いととんぼ)、川蜻蛉(かわとんぼ)、蜻蛉生る(とんぼうまる)、やご、などは夏の季語に分類されています。
陰暦七月一日のことを「釜蓋朔日(かまぶたついたち)」といい、盆の入りで地獄の釜の蓋が開き、亡者が解放されて家に帰ることを許される日だといい、初秋の季語となっています。
これを「蜻蛉朔日(とんぼついたち)」ともいい、赤とんぼがこの世に現れる日で、これをとることを禁じました。蜻蛉を精霊と一体と考えてのことだといいます。
お盆との関連では、精霊蜻蛉(しょうりょうとんぼ)、仏蜻蛉(ほとけとんぼ)はまさにお盆の頃に飛ぶトンボのことをいいますが、主にウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)のことをさすともいわれます。
同じようにお盆の頃に見られるので名付けられた「精霊ばった(しょうりょうばった)」も秋の季語(三秋)で、「螇蚸(ばった)」の傍題となっています。
最後に、蜻蛉の例句をいくつか見てみましょう。
(蜻蛉は、「とんぼ」とも「とんぼう」とも読みます。)
- 行く水におのが影追ふ蜻蛉かな 千代女
- 生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉 夏目漱石
- から松は淋しき木なり赤蜻蛉 河東碧梧桐
- とんぼうや水輪の中に置く水輪 軽部烏頭子
- 蜻蛉に空のさゞなみあるごとし 佐々木有風
- とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな 中村汀女
- 蜻蛉の消え入る空の信濃かな 勝俣一透
季語「蜻蛉(とんぼ)」について詳しくは、秋の虫の季語・蜻蛉、蟬、蝶など夏から見られる虫たちもぜひご覧ください。