秋の天文に分類される季語は、これまで
秋の空、天気の季語
秋の風の季語
秋の月の季語
秋の星の季語
…とお届けしてきまして、今回は第五回目となります。
秋の色、秋の声、露、露時雨、露寒、露霜、秋の霜、龍田姫などの季語をまとめました。
これらの季語でぜひ一句詠んでみてくださいね。
天文
秋の色(あきのいろ)
三秋
秋の景色、秋の気配、秋の気分のこと。
古歌では紅葉のイメージを持って詠んだものが多かったが、現代では秋らしい雰囲気のことをいうようになった。
秋の色糠味噌壼もなかりけり 芭蕉
裏門に秋の色あり山畠 支考
めつむれば秋の光は地より湧き 川口重美
秋光をさへぎる銀の屏風かな 前田普羅
ひとめぐりして秋色をいふばかり 石田郷子
秋の声(あきのこえ)
三秋
秋の澄んだ空気の中を聞こえてくる、秋らしい物音のこと。
虫の音、風の音、雨の音、木の葉のそよぎ、また秋の心に聞こえてくる音など。
川風や草にもよらず秋の声 士朗
遠風か夜空に満つる秋の声 阿部次郎
秋声や石ころ二つ寄るところ 村上鬼城
観念の耳の底なり秋の声 正岡子規
貝がらやむかしむかしの秋の声 中川宋淵
露(つゆ)
三秋
雲のない晴天の夜は、放射冷却により大気と地面の温度が下がり、空気中の水蒸気が水滴へと変わり、草木や石などの表面に露が降りる。
秋に多い現象なので、秋の季語としている。
白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける
文屋朝康 後撰集 秋
露ちるや桂の里の臼の音 闌更
白露や扉を開く金色堂 石井露月
白露に阿吽の旭さしにけり 川端茅舎
かたつむり大露の草に沈みゆく 佐野青陽人
猫と生れ人間と生れ露に歩す 加藤楸邨
しらつゆやすゝきにからむ葛かづら 西島麦南
露時雨(つゆしぐれ)
晩秋
露が一面に降りて、まるで時雨が降ったようになること。
また、草木の露がまるで時雨のようにはらはらとこぼれるのも、露時雨という。
露時雨宇治を離れて道細し 嘯山
露時雨仏頂面へかゝりけり 一茶
白露のはやしくるゝか極楽寺 葛三
父恋ふる我を包みて露時雨 高浜虚子
露寒(つゆざむ)
晩秋
晩秋の寒さがひとしお感じられる頃、露が霜になりそうな頃の寒さのこと。
露寒のこの淋しさのゆゑ知らず 富安風生
露寒の画集をひらく膝そろへ 石田あき子
露寒き海峡の灯に吾子ねむる 三上春代
露寒し縷々とラジオの「尋ねびと」 伊丹三樹彦
露霜(つゆじも)
晩秋
露が凍って、ほぼ霜となったもので、水霜ともいう。
また、淡く消えやすい霜のこと。
露霜にあへる黄葉を手折り来て妹とかざしつ後は散るとも
秦許遍麻呂 万葉集巻八
朝風や水霜すべる神の杉 幸田露伴
水霜を浴びて白菜緊まりけり 阿波野青畝
乱菊にけさの露霜いとどしき 鈴木花蓑
つゆじもの烏がありく流離かな 加藤楸邨
秋の霜(あきのしも)
晩秋
霜は冬に降りるものだが、立秋前に見られる霜のことを秋の霜という。
冬瓜のいたゞき初むる秋の霜 李由
踏草の起も直らず秋の霜 吟江
秋霜や竹を放るゝ豆の蔓 風荷
啄木鳥の觜に響くか秋の霜 鼠飲
龍田姫(たつたひめ)
三秋
大和国平群郡(現在の奈良県生駒郡)の龍田山に祀られる、日本の秋の女神。
奈良の西にあたり、五行説では西は秋にあたるので、秋をつかさどる神とされた。
奈良の東にある佐保山の、春の佐保姫と対比される。
また、龍田川は紅葉の名所として知られる。
霰せばお笠めされよ龍田姫 乙二
もみぢ葉の一葉をいつき龍田姫 松瀬青々
竜田姫月の鏡にうち向ひ 青木月斗
龍田姫森に来たまふ句碑びらき 古賀まり子