朝晩が冷え込むようになると、紅葉前線も一気に南下してきます。
たくさんの種類の木々がそれぞれの色に染まり、長い冬の眠りに入る前に有終の美を飾るかのように華やかに彩られていきます。
日本では春の桜と並んで、見逃したくない一大イベントですね。
行楽シーズンも重なり、もみじ狩りに行く際にも知っているともっと楽しめるようなさまざまな季語を集めてみました。
紅葉に関する季語・樹種編はこちら
植物
紅葉
晩秋
秋になり落葉樹の葉が紅色に変わること。
一番早い北海道では九月頃から、高地では十月、平地では十一月頃から楽しめる。
葉緑素がなくなり、蓄積したアントシアニンなどの色素の作用で赤く見える。
黄色に色づく黄葉もふくめて言う。
黄葉もやはり葉緑素がなくなり、カロチノイドの色素が黄色に見える。
「もみいづる」「もみづる」は動詞。
とくに紅葉・黄葉の美しい木を「名木紅葉(なのきのもみじ)」という。
漆紅葉、櫨紅葉、銀杏黄葉、白膠紅葉、柏黄葉、柿紅葉、梅紅葉、合歓紅葉、満天星紅葉、葡萄紅葉、白樺黄葉など。
大寺の片戸さしけり夕紅葉 一茶
落ち合うて川の名かはる紅葉かな 大谷句仏
霧淡し禰宜が掃きよる崖紅葉 杉田久女
紅葉焚くことも心に本を読む 山口青邨
障子しめて四方の紅葉を感じをり 星野立子
中学生二里の家路の山紅葉 相馬遷子
いづかたも音なき夜明山紅葉 岡田日郎
初紅葉(はつもみじ)
仲秋
秋になって初めて見る紅葉。
初とつくことで、待っていたものに出会えた喜びの気持ちがこめられている。
薄紅葉(うすもみじ)
仲秋
まだ十分に紅葉していなくて、薄く色づき始めた状態のこと。
静かに深まりゆく秋の気配が感じられる。
黄葉
晩秋
晩秋に木々の葉が黄色に色づくこと。
銀杏(いちょう)、楢(なら)、櫟(くぬぎ)などが代表的な黄葉する木々。
照葉(てりは)
晩秋
秋晴れの日に、太陽の光に照り輝く紅葉。
紅葉かつ散る
晩秋
紅葉した木々が一方では色づいていながら、また一方では散ってゆく様子。
「かつ」なので二つの状態が同時に存在しているという意味になる。
「かつ」のない「紅葉散る」はすっかり散ってゆく状態で冬の季語になる。
黄落(こうらく)
晩秋
木の葉や果実が、秋に黄色に色づいて落ちること。
雑木紅葉(ぞうきもみじ)
晩秋
「名木紅葉(なのきのもみじ)」の対義語で、さまざまな種類の木々の紅葉。
紅、黄のほか褐色や銅色などさまざまで、にぎやかで明るい感じになる。
時候
紅葉月(もみじづき)
晩秋
陰暦九月の異称。
天文
秋色(しゅうしょく)
三秋
彩り豊かな秋の景色、秋の気分や気配のこと。
紅葉についていうことが多い。また紅葉のほか、黄葉、稲の色づき、秋の草花の色にもいう。
空や海、なんとなく寂しい秋景色の形容にも使われる。
龍田姫(たつたひめ)
三秋
秋の紅葉を司る女神。竜田川は紅葉の名所である。
春の佐保姫に対して、秋は龍田姫といわれる。
陰陽五行説で西は秋にあたり、奈良の京の西に竜田山があり、龍田大社に祀られている。
地理
山粧う(やまよそう)
三秋
色とりどりの紅葉に彩られる山々を、着飾って装うと表現した。
春は「山笑ふ」夏は「山滴る」冬は「山眠る」という季語がある。
これらの季語は、北宋の画家・郭煕(かくき)の言葉
「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠として滴(した)たるが如し、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として睡(ねむ)るが如し」
からといわれている。
野山の色
晩秋
紅葉に彩られた秋の山野の姿。
野山の錦(のやまのにしき)
晩秋
秋の野山が、錦の華やかな織物のように美しく華麗に紅葉しているさま。
生活
紅葉衣(もみじごろも)
晩秋
着物の襲(かさね)色目のひとつで、陰暦九月より十一月まで着用した。
紅葉狩(もみじがり)

紅葉舟
晩秋
紅葉した自然の山々に出かけ、紅葉の美しさを鑑賞しに行くこと。
紅葉の賀(もみじのが)
晩秋
紅葉の美しい頃に行う祝宴のこと。
行事
紅葉の帳(もみじのとばり)
初秋
「庭の立琴(にわのたてごと)」という季語の傍題。
庭の立琴とは七夕の行事のひとつで、宮中や公卿の家で行われた。
この時、几帳(きちょう)には五色の帳(とばり)、五色の糸をかけた。
これを紅葉のとばりという。
紅葉の橋(もみじのはし)
初秋
「鵲(かささぎ)の橋」という季語の傍題。
七夕の夜、天の川にかかる橋のこと。
動物
紅葉鮒(もみじぶな)
晩秋
源五郎鮒(ゲンゴロウブナ)、釣り人の間では別名ヘラブナといわれるコイ科の淡水魚のヒレが、晩秋に赤みを帯びてくることから、この呼び名ができた。
主に琵琶湖周辺で呼ばれる。
紅葉鱮(もみじたなご)
晩秋
鱮(タナゴ)はコイ科に分類される、体長約6〜10センチの淡水魚。
源五郎鮒と同じで、晩秋にヒレが赤くなったタナゴのことをいう。