今日の季語、三月七日は「春泥」をお届けします。
今日の季語 3月7日
春泥(しゅんでい)
三春
春のぬかるみ、またその泥のこと。
凍解(いてどけ)、雪解(ゆきどけ)、春雨(はるさめ)などにより、土の地面が泥になり、ぬかるみとなる。
暖かくなり雪も解け、土が潤い、春雨が降ると空気にも春の匂いが漂う、春の情緒豊かな季語である。
足を取られすべりやすく泥はねもしやすく、靴も汚れ歩きにくくなる一方で、春を迎えた喜びも感じる語である。
「春泥」の傍題: 春の泥(はるのどろ)
春泥の鏡の如く光りをり 高浜虚子
鴨の嘴(はし)よりたらたらと春の泥 高浜虚子
春泥にうすき月さしゐたりけり 久保田万太郎
北の町の果てなく長し春の泥 中村汀女
戦ひしごとき靴跡春の泥 秋元不死男
春泥や石と思ひし雀とび 佐野良太
春泥やよろこびありて妻と出づ 松沢鍬江
行きずりの人美しや春の泥 原石鼎
酒場の灯しみて春泥更けにけり 清原枴童
春泥に押し合ひながらくる娘 高野素十
春泥や船と地継ぐ板一枚 室積徂春
ゆるゆると児の手を引いて春の泥 杉田久女
春泥に傾く芝居幟(のぼり)かな 富安風生
古葎美しかりし春の泥 石田波郷
春泥の子の血吾が唇(くち)もて覆ふ 長谷川秋子
春泥や林は未知の楽しさ秘め 矢崎幸枝
春泥や馬頭観音つんのめり 山田みづえ
春泥の道を悪夢のつゞきかと 上田五千石
曽根崎の昼闌(た)けにけり春の泥 日野草城
春聯(しゅんれん)のうつれば赤き春の泥 山口青邨