今日の季語、三月二日は「東風(こち)」をお届けします。
今日の季語 3月2日
東風(こち)
三春
春に吹く東からの風。
柔らかく暖かい湿った東風は、春を告げる風である。
それまでの冷たい乾燥した北風とは違って、寒気が緩み、時には雨をともなう柔らかい東風が吹くので、はっきりと春の風が吹いてきたという感慨がある。
冬はシベリア高気圧が勢力を強め、西高東低の気圧配置となるが、春になってシベリア高気圧の勢力が弱まり冬型の気圧配置が崩れると、移動性高気圧と温帯低気圧が交互に西から東へと通過するようになる。
西から低気圧がやってくる時には、東の高気圧から風が吹く。
低気圧は前線を伴い、雨になることも多い。
東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ
菅原道真
東風が強風になると、海が時化になる「東風時化(こちしけ)」として漁業では警戒される。
(七十二候の「東風解氷(はるかぜこおりをとく)」は立春の初候で、春風が川や湖の氷を解かし始めるころという意味です。)
「春の雲」の傍題: こち風、正東風(まごち)、強東風(つよごち)、夕東風(ゆうごち)、朝東風(あさごち)、雲雀東風(ひばりごち)、鰆東風(さわらごち)、梅東風(うめごち)、桜東風(さくらごち)、あめ東風(あめごち)、いなだ東風(いなだごち)、あゆの風
東風吹くと語りもぞ行く主と従者 太祇
河内路や東風吹送る巫女の袖 蕪村
のうれんに東風吹くいせの出店かな 蕪村
東風吹や飯の小けぶり夕筑波 一茶
亀の甲並べて東風に吹かれけり 一茶
夕東風のともしゆく燈のひとつづつ 木下夕爾
東風鴉影より重く地をあゆむ 伊藤凍魚
夕東風や海の船ゐる隅田川 水原秋櫻子
東風の船汽笛真白く吹きやめず 山口誓子
嘶(いなな)きてはからだひからせ東風の馬 大野林火
荒東風の濤は没日(いりひ)にかぶさり落つ 加藤楸邨
夕東風に切り口白し竹の束 永井東門居
東風寒く皮はぎ皮をはがれけり 鈴木真砂女
東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪 杉田久女
竹生島さしてましぐら東風の船 鈴木花蓑
流れ来て瀬にたつ鳥や東風の吹く 吉田冬葉