近年猛暑の夏が続いています。
異常気象や様々な自然災害が増加している昨今、昔とは明らかに違い夜になっても気温があまり下がらず、エアコンなしでは命の危険も感じるような、全国的に厳しい暑さとなっています。
くれぐれも水分補給を忘れずに、熱中症には十分気をつけてお過ごしくださいね。
今回は夏の暑さに関する季語を集めました。
俳句を詠む際にぜひ参考になさってください。
時候
炎昼(えんちゅう)
晩夏
炎天の昼間、真夏の暑い昼下がりのこと。
- 炎昼のこもれば病むと異ならず 大野林火
- 炎昼や身ほとりの木はむらさきに 下村槐太
- 炎昼のおのれの影に子をかくす 日下部宵三
盛夏(せいか)
晩夏
夏の暑さの盛り、一番暑い季節、真夏のこと。
- 鈴懸に盛夏の古城仰がれぬ 雨宮弥紅
- 波の上に燃えたる火星蝦夷真夏 阿部慧月
- ゴヤ、グレコ盛夏睡魔に憑かれたり 東早苗
- 旅鞄大いに古りぬ盛夏かな 手塚美佐
暑し(あつし)
三夏
夏の気温の高い状態のこと
- 石も木も眼(まなこ)に光る暑さかな 去来
- 傘(からかさ)の匂うてもどる暑さかな 涼帒
- さびつきて碇の暑し砂の上 乙二
- 嘴あけて烏も暑きことならん 田村木国
- 世にも暑にも寡黙をもつて抗しけり 安住敦
- 口重に過せし暑気も過ぎにけり 能村登四郎
暑き日(あつきひ)
三夏
夏の暑い一日、または夏の暑い太陽の意味でも用いられる。
- 暑き日を海に入れたり最上川 芭蕉
- しばらくは落る日暑し樟の枝 成美
- かへりみて暑かりし日はかがやけり 山口波津女
大暑(たいしょ)
晩夏
二十四節気の一つで、小暑のあと15日目。7月23日ごろにあたる。
この大暑の15日間が最も暑い時期となる。
- 念力のゆるめば死ぬる大暑かな 村上鬼城
- 蟬吟のしぶるは大暑兆しをり 水原秋櫻子
- 水晶の念珠つめたき大暑かな 日野草城
- 母ひとり故郷にある大暑かな 高室呉龍
極暑(ごくしょ)
晩夏
暑さの極みで、土用中に多い。
この時期には最高気温を記録することもある。
- 汽車たてばそこに極暑の浪の群れ 吉岡禅寺洞
- 黒松の秀の碧空の極暑かな 野村喜舟
- 柘榴の実現れいでし極暑かな 瀧春一
溽暑(じょくしょ)
晩夏
湿度の高い蒸し暑さ。
梅雨の終わり頃や、土用の曇りの日など。
- 照り返す溽暑の土を眩しみぬ 中川鼓朗
- 仏眼と眼が合ふ溽暑暗くして 岸田優
炎暑(えんしょ)
晩夏
真夏の燃えるような暑さ。
ぎらぎらと照りつける太陽の光を感じさせる言葉である。
- うまや路の炎暑にたかき槇一樹 飯田蛇笏
- 炎熱や勝利の如き地の明るさ 中村草田男
炎ゆる(もゆる)
晩夏
炎天下の燃えるような熱気。
- 炎ゆる海わんわんと児が泣き喚き 山口誓子
- 炎ゆる日の甍の上にとゞまれる 加倉井秋を
- 浦上へ高まる廃墟夏炎ゆる 石原八束
- 砂丘ただ炎ゆ異国の轍のふかく荒く 古沢太穂
灼くる(やくる)
晩夏
真夏の太陽の、直射日光の激しさ。
砂浜や岩場、舗装道路などは火傷するほどに熱くなる。
- 松風の吹いてをれども灼けてをり 下村槐太
- 国滅びただ灼石のころがりぬ 下村梅子
- 灼けし町夜は綺羅星を鏤めり 山本一甫
天文
熱風(ねっぷう)
晩夏
真夏に吹く、熱くて乾いた風。
暑い砂浜や舗装道路を吹く風、最高気温をもたらすフェーン現象による高温低湿の風など。
- 熱風の黒衣がつつむ修道女 中島斌雄
日盛(ひざかり)
晩夏
夏の日中、正午ごろから2時、3時にかけて、一番暑い盛りのころ。
日の盛ともいう。
- 日盛りや半ば曲りて種胡瓜 蘭更
- 日盛や蟬は眠りて滝の音 鈳文
- 日ざかりをしづかに旅の匂ひかな 大江丸
- 日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり 松瀬青々
西日(にしび)
晩夏
真夏の強烈な暑さをと光をもたらす西日。
- ふくらみて大煙突と大西日 永井東門居
- 西日失せ表情堅き柱かな 上野泰
- 病院の西日の窓の並びたる 五十嵐播水
炎天(えんてん)
晩夏
灼けつくような真夏の空。
- 炎天の空美しや高野山 高浜虚子
- 炎天にあがりて消えぬ箕のほこり 芥川龍之介
- 炎天のいつか夕ばむ川面かな 久米三汀
- 炎天の遠き帆やわがこころの帆 山口誓子
油照(あぶらでり)
晩夏
空がどんより曇って風がなく、汗ばむような蒸し暑さ。
- 堤行く歩行荷(かちに)の息や脂照り 沾涼
- 大坂や埃の中の油照り 青木月斗
- ざんばら髪の山彦あるく油照 長谷川双魚
旱(ひでり)
晩夏
極暑に雨が降らず照り続くこと。
水不足をもたらすことも多い。
- 旦夕に雲立ち消ゆる旱かな 大須賀乙字
- 干ものに蟬うちあたる旱かな 増田龍雨
- 大旱や泥泉地獄ふつふつと 山口誓子
- 暗き家に暗く人ゐる旱かな 福田甲子雄
地理
熱砂(ねっさ)
晩夏
真夏の太陽の熱で、焼けるように熱くなった砂のこと。
砂浜、河原、砂丘などの砂は非常に熱くなる。
もとは「灼くる(やくる)」という時候の季語の傍題とされていたが、用例が増えるのに伴い地理の季語となった。
- 蛇行とは河が熱沙とたたかふとき 加藤楸邨
- 窪なして熱砂水なき河流る 岡野等
日焼田(ひやけだ)
晩夏
旱のために水が涸れてしまった田。
田がひび割れ、稲は黄色くなり生気を失う。
- 照り続く焼け田の中や磯の市 丈草
- 旱田を午後ほつそりと牛の貌 渡辺ひろし