晩夏の時候の季語

二十四節気-晩夏
晩夏は、夏の三ヶ月を初夏、仲夏、晩夏と分けたときの終わりの一ヶ月で、ほぼ七月にあたります。

二十四節気では小暑、大暑の期間(七月七日頃から八月七日頃)になります。

今回は夏の時候の季語のなかでも、晩夏に分類される季語を集めました。

まさに今ならではの時候の季語で、一句詠んでみませんか。

三夏の時候の季語
初夏の時候の季語
仲夏の時候の季語

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時候

晩夏(ばんか)

晩夏
夏の三ヶ月を初夏、仲夏、晩夏と分けたときの最後の一ヶ月にあたる。
今のほぼ七月(陰暦六月)。

夏の終わり頃の季節をいい、まだ厳しい夏の暑さの中にありながらも、どこか夏の衰えの兆しを思わせる、物憂い感じを含む語である。

空や雲、海の波、地面に落ちる影、吹いてくる風の中にも盛夏を過ぎた変化が感じ取れる時期。

季夏(きか)、晩夏光(ばんかこう)
  • 晩夏なり古びし風の吹きをれり 相生垣瓜人
  • バシと鳴るグローブ晩夏の工場裏 西東三鬼
  • 蘆梳きて晩夏せせらぐ水の声 佐野まもる
  • 白粥を吹きくれる妻晩夏光 目迫秩父

七月(しちがつ)

晩夏
七月のカレンダー
小暑と大暑の月。
七月中旬頃から急速に強まる太平洋高気圧に押し上げられ、梅雨前線が次第に北上し、南から順に梅雨明けとなる。
この時に雷が鳴ることが多く、「雷が鳴ると梅雨が明ける」といわれる。

梅雨が明けると盛夏となり、鼠色に曇っていた空は一転、青空に白い雲が広がるようになる。
夏休みに入った子供たちや家族連れで、海や山は行楽の人々でにぎわう。

  • 夕月に七月の蝶のぼりけり 原石鼎
  • 七月のなほ雨雲の船出でゆく 米澤吾亦紅
  • 七月の青き水ゆく竹の奥 石原舟月
  • 七月やみづから枯るる松一樹 村山古郷
  • 七月のくらきところを鶏あゆむ 長谷川双魚
  • 七月も十日過ぎたる雨の音 宇多喜代子

水無月(みなづき)

晩夏
陰暦六月の異名で、ほぼ陽暦の七月にあたる。
由来は、猛暑のため水が無くなる月という説がある。

六月の地さへ裂けて照る日にもわが袖乾めや君に逢はずして

万葉集巻十

傍題の「風待月」は、暑さの中で風を待つという意味。
また「青水無月」は、山野が青々と茂っているという意味の言葉である。

風待月(かぜまちづき)、常夏月(とこなつづき)、青水無月(あおみなづき)
  • 水無月や風に吹かれに古里へ 鬼貫
  • 水無月の限りを風の吹く夜かな 闌更
  • 水無月の朝顔すずし朝の月 樗良
  • 戸口から青みな月の月夜かな 一茶
  • 起臥(おきふし)の神鳴(かみなり)月や山の坊 河東碧梧桐
  • みな月の日に透く竹の古葉かな 飯田蛇笏

小暑(しょうしょ)

晩夏
暑中見舞い
二十四節気の一つで、七月七日頃。
この日から暑中に入り、以後立秋(八月八日頃)の前日までが暑中で、暑中見舞いを送る期間となる。

梅雨明け間近で、集中豪雨や大雨になることも多い時期。

  • 部屋ぬちへ小暑の風の蝶ふたたび 皆吉爽雨

腐草蛍となる(ふそうほたるとなる)

晩夏
蛍の乱舞
中国の七十二候(大衍暦(だいえんれき)、宣明暦(せんみょうれき))の一つで、大暑の第一候。
陽暦七月二十三日から二十八日頃。

日本の略本暦(明治)の七十二候では、芒種の次候で、「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」六月十一日から十五日頃となっている。
中国の七十二候は、中国河北(日本では東北地方とほぼ同緯度)の大陸性の気候に合わせてあるので、これは日本に合わせて作られた。
歳時記では中国の七十二候を季語としている。

梅雨明(つゆあけ)

晩夏
二重虹
日本全土を蔽っていた梅雨前線も、次第に北上して沖縄から梅雨明けとなる。
気象庁では梅雨明け宣言が出される。

梅雨明け前には、雷鳴を伴った豪雨が多くある。

農作業の目安として用いられた古暦の上では、入梅(6月11、12日)の後30日で梅雨明け(7月11、12日)とされた。

梅雨あがる、梅雨のあと
  • 山の上に梅雨あけの月出でにけり 岡本癖三酔
  • 梅雨明けぬ猫が先づ木に駈け登る 相生垣瓜人
  • 梅雨明けをよろこぶ蝶の後をゆく 杉山岳陽
  • 庭石に梅雨明けの雷ひびきけり 桂信子

冷夏(れいか)

晩夏
冷夏-黒雲と水田
六月から八月の夏の期間、平年に比べて気温の低い夏のこと。

南の太平洋高気圧の勢力が弱く、北のオホーツク海高気圧が強いと、梅雨前線が北上せず日本にとどまるため、梅雨が長引き冷夏となることが多い。

低温や日照不足により、農作物に影響を及ぼす。

夏寒し(なつさむし)、夏寒(なつさむ)、みどりの冬(みどりのふゆ)、冷害(れいがい)、凶冷(きょうれい)
  • 夏さむくあるく園生の青すすき 飯田蛇笏
  • 夏寒や煤によごるる碓氷村 室生犀星
  • 父恋し夏さむざむと裘(かはごろも) 川端茅舎
  • 夏さぶる千曲(ちくま)へと汽車くだりゆく 八木絵馬

炎昼(えんちゅう)

晩夏
炎天の昼間、真夏の暑い昼下がりのこと。

夏真昼(なつまひる)
  • 炎昼のこもれば病むと異ならず 大野林火
  • 炎昼や身ほとりの木はむらさきに 下村槐太
  • 炎昼のおのれの影に子をかくす 日下部宵三

土用(どよう)

晩夏
土用とは、季節の最後の約十八日間(立夏、立秋、立冬、立春の前の十八日間)をいうが、
主に立秋前の十八日間(夏の土用)のことを指す。

陰陽五行説では各季節の終わりを「土」が支配すると考えられている。

秋の土用を「秋土用」、冬の土用を「寒土用」といいます。
単に「土用」というと、夏の土用をさします。

土用入りの日を土用太郎、二日目を土用次郎、三日目を土用三郎と称する。
照り土用は、土用の期間中に雨が降らず、猛暑が続くこと。

土用入(どよういり)、土用前(どようまえ)、土用中(どようなか)、土用太郎(どようたろう)、土用次郎(どようじろう)、土用三郎(どようさぶろう)、土用明(どようあけ)、照り土用(てりどよう)

時候以外の夏の土曜に関する季語
天文…土用あい、土用東風(どようごち)、土用凪(どようなぎ)
地理…土用波(どようなみ)
生活…土用鰻(どよううなぎ)、土用の丑の日の鰻、鰻の日、土用蜆(どようしじみ)、土用干(どようぼし)、土用見舞(どようみまい)、土用餅
行事…土用灸、土用芝居、土用艾(どようもぐさ)
植物…土用芽、土用の芽、土用藤

  • 帆柱に苫干す舟の土用かな 海如
  • ほろほろと朝雨こぼす土用かな 正岡子規
  • 逆光の桐さわさわと土用照 佐野青陽人
  • かなかなに山は夜深き土用かな 中島月笠
  • 土用雀吹上げらるる波の方 山田みづえ
  • うなぎ割く土用太郎の満月に 吉野たちを
  • 根こそぎの草流れくる土用かな 西川文子
  • 西日背に富士せり上る土用かな 渡辺真

盛夏(せいか)

晩夏
夏の暑さの盛り、一番暑い季節、真夏のこと。

真夏(まなつ)、夏旺ん(なつさかん)
  • 鈴懸に盛夏の古城仰がれぬ 雨宮弥紅
  • 波の上に燃えたる火星蝦夷真夏 阿部慧月
  • ゴヤ、グレコ盛夏睡魔に憑かれたり 東早苗
  • 旅鞄大いに古りぬ盛夏かな 手塚美佐

三伏(さんぷく)

晩夏
夏の暑い盛りの時期で、中国の陰陽五行説による区分である。

夏至の後第三の庚(かのえ)の日を初伏、第四の庚の日を中伏、立秋後の第一の庚の日を末伏といい、これらを合わせて「三伏」という。

庚は金気であり、火気である夏に、金気(秋の気)が伏し隠れていること。

お灸

東洋医学では、三伏の日にお灸をするとよいとされています。

初伏(しょふく)、中伏(ちゅうふく)、末伏(まっぷく)
  • 三伏や用ゐ馴れたる腹ぐすり 小松月尚
  • 三伏の夕べの星のともりけり 吉岡禅寺洞
  • 三伏の白雲を置きて浅間山 村山古郷
  • 三伏や摑みてこぼす握飯 清水基吉
  • 三伏の闇はるかより露のこゑ 飯田龍太
  • 三伏に堪へしんかんと翌檜(あすなろう)田中鬼骨
  • 三伏の折しも風の大手町 正木ゆう子

大暑(たいしょ)

晩夏
二十四節気の一つで、小暑のあと15日目。7月23日ごろにあたる。
この大暑の15日間が最も暑い時期となる。

大暑来る(たいしょくる)、大暑の日(たいしょのひ)
  • 念力のゆるめば死ぬる大暑かな 村上鬼城
  • 蟬吟のしぶるは大暑兆しをり 水原秋櫻子
  • 水晶の念珠つめたき大暑かな 日野草城
  • 母ひとり故郷にある大暑かな 高室呉龍

極暑(ごくしょ)

晩夏
暑さの極みで、土用中に多い。
この時期には最高気温を記録することもある。

酷暑(こくしょ)
  • 汽車たてばそこに極暑の浪の群れ 吉岡禅寺洞
  • 黒松の秀の碧空の極暑かな 野村喜舟
  • 柘榴の実現れいでし極暑かな 瀧春一

溽暑(じょくしょ)

晩夏
湿度の高い蒸し暑さ。
梅雨の終わり頃や、土用の曇りの日など。

蒸暑し(むしあつし)、湿暑(しつしょ)
  • 照り返す溽暑の土を眩しみぬ 中川鼓朗
  • 仏眼と眼が合ふ溽暑暗くして 岸田優

炎暑(えんしょ)

晩夏
真夏の燃えるような暑さ。
ぎらぎらと照りつける太陽の光を感じさせる言葉である。

炎熱(えんねつ)
  • うまや路の炎暑にたかき槇一樹 飯田蛇笏
  • 炎熱や勝利の如き地の明るさ 中村草田男

炎ゆる(もゆる)

晩夏
炎天下の燃えるような熱気。

  • 炎ゆる海わんわんと児が泣き喚き 山口誓子
  • 炎ゆる日の甍の上にとゞまれる 加倉井秋を
  • 浦上へ高まる廃墟夏炎ゆる 石原八束
  • 砂丘ただ炎ゆ異国の轍のふかく荒く 古沢太穂

灼くる(やくる)

晩夏
真夏の太陽の、直射日光の激しさ。
砂浜や岩場、舗装道路などは火傷するほどに熱くなる。

熱砂(ねっさ、用例が増え地理の季題として定着)、日焼浜(ひやけはま)、灼岩(やけいわ)、日焼岩(ひやけいわ)
  • 松風の吹いてをれども灼けてをり 下村槐太
  • 国滅びただ灼石のころがりぬ 下村梅子
  • 灼けし町夜は綺羅星を鏤めり 山本一甫

夏深し(なつふかし)

晩夏
夏の暑い盛りの土用の頃。
長かった夏もようやく去ってゆくという感慨も含んでいる。

夏深む(なつふかむ)、夏さぶ、夏闌(なつたけなわ)

他の季節にもそれぞれ、春深し、春深む、秋深し、秋深む、冬深し、冬深む、年深し(年の終わり)という季語があります。

  • 夏深し或る夜の空の稲光 井上井月
  • うすもやをこめて菜園夏深む 飯田蛇笏
  • 四辻に雀跳び居り夏深し 内田百閒
  • 夏深き樹石は夜に入りにけり 菅裸馬
  • 溪遠く越ゆる人声夏深む 村田脩
  • 夏闌けて硯やすらふ水の中 宇佐美魚目

夏の果(なつのはて)

晩夏
夏の終わり。夏が終わってしまうこと。立秋(八月八日頃)が近づくころ。
過ぎゆく夏を惜しむ気持ちがこもっている。

夏終る(なつおわる)、夏果(なつはて)、夏の別れ(なつのわかれ)、ゆく夏、夏惜しむ(なつおしむ)、暮の夏(くれのなつ)、夏の限り(なつのかぎり)、夏を追う(なつをおう)
  • 電線をはしる雨玉夏ゆく日 飛鳥田孋無公
  • まつさをな糸瓜さがり来夏終る 中尾白雨
  • 夏の果死仕度またわが事よ 大野林火
  • ぱんぱんのひぢの黒さよ夏了はる 石橋辰之助
  • 舟底を擦る川の砂夏の果 桂信子

秋近し(あきちかし)

晩夏
山とうろこ雲
夏の終わり、秋も近いと感じられる時期。
秋を待つ心、早く秋がきてほしいという期待の気持ちがこもっている。

日中はまだ暑くても、空にうろこ雲が広がり、つくつく法師や蜩(ひぐらし)の声に、秋が近いのを感じる頃である。

秋隣(あきどなり)、秋隣る(あきとなる)、秋の隣り(あきのとなり)、秋の境(あきのさかい)、秋迫る(あきせまる)、来ぬ秋(こぬあき)、秋風近し(あきかぜちかし)
  • 秋ちかき心の寄(よる)や四畳半 芭蕉
  • 薄ぐれや秋を隣りのわら庇(ひさし)蝶夢
  • 秋近き影を憐む鏡かな 士朗
  • 秋近し黄ばみかゝりし鮎の腹 其考
  • 物の葉のそよぎに浜の秋近し 里紅
  • 松風や紅提灯も秋隣 芥川龍之介
  • 飯櫃にまたのる猫や秋隣 増田龍雨
  • 秋近き心遊ぶや沢の水 小杉余子
  • 肩ならべ秋来る星座読み合ひぬ 上村占魚

秋を待つ(あきをまつ)

晩夏
秋になるのを心待ちにする気持ち。
長く暑かった夏の終わりに、秋めいてくること。

秋待つ(あきまつ)
  • はなれうき宿や秋まつ葡萄棚 北枝
  • 秋待や径ゆきもどり日もすがら 室生犀星
  • 手描き凧売り古城址に秋を待つ 野見山ひふみ

夜の秋(よるのあき)

晩夏
星空
晩夏の夜に、秋の気配が漂うこと。
土用半ばに秋風ぞ吹く、と言われるように、夏も終わりになると夜はいくぶん気温も下がり、虫の音も聞こえ始める。

秋の夜のことではなく、夏の夜に感じる秋の兆しのことである。

夜の秋(よのあき)
同じように、「秋」がついていても他の季節の季語
春…竹秋、竹の秋
夏…麦秋、麦の秋、来ぬ秋、翌は秋(あすはあき)・翌来る秋(あすくるあき/あすきたるあき)…夏の終わり、陰暦六月の晦日
  • 粥すゝる杣が胃の腑や夜の秋 原石鼎
  • 家かげをゆくひとほそき夜の秋 臼田亜浪
  • 西鶴の女みな死ぬ夜の秋 長谷川かな女
  • 簪屋と向き合ふ寄席や夜の秋 宮武寒々
  • 手花火の香の沁むばかり夜の秋 中村汀女
  • 山の湖を灯のふちどりて夜の秋 伊藤柏翠
  • 手を突きししとねのくぼみ夜の秋 川島千枝

水無月尽(みなづきじん)

晩夏
陰暦六月の晦日。
この日で夏は終わり、明日は秋になるということ。

茅の輪

「夏越(なごし…晩夏の行事の季語)」を行う日である。

夏越の傍題…大祓(おおはらえ)、夏越の祓(なごしのはらえ)、祓(はらえ)、禊(みそぎ)、茅の輪(ちのわ)、菅貫(すがぬき)、輪越祭(わごしまつり)、撫物(なでもの)、形代流す(かたしろながす)、川社(かわやしろ)、川祓(かわはらえ)、禊川(みそぎがわ)、麻の葉流す(あさのはながす)、水無月祓(みなづきはらえ)、夏祓(なつはらえ)、みそぎ

翌は秋(あすはあき)、翌来る秋(あすくるあき/あすきたるあき)、七月尽(しちがつじん)
  • みなづきのかぎりを風の吹く夜かな 闌更
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