夏の季語・天文
片蔭(かたかげ)
晩夏
真夏の焼けるような太陽の下、正午を過ぎると建物や塀、木々の片側に暗い日陰ができる。
道ゆく人々は暑さを避け、陰のある方、「片蔭」を歩く。
炎暑の夏の日陰、とくに午後から夕方の日陰をいう。
「片蔭」の傍題: 片かげり(かたかげり)、日陰(ひかげ)、夏陰(なつかげ)、夏山陰(なつやまかげ)、夏木陰(なつこかげ)
軒下に繋げる馬の片かげり 高浜虚子
大船の日蔭へまはる筏あり 永井東門居
片蔭や椎をこぼるゝ軒雀 石田波郷
片陰や弾き出されて砂利完(まつた)し 香西照雄
片影となりし籬(まがき)に添ひありく 五十崎古郷
片蔭をゆき中年を過ぎにけり 岸風三楼
帯ゆるく片蔭をゆくもの同士 橋本多佳子
片蔭をもどる豆腐の水たるる 佐々木民子
片陰のふかき岩なり背に憩ふ 山口草堂
紙芝居片蔭の大人のはうが笑ふ 原田種茅
片蔭を行き遠き日のわれに逢ふ 木村蕪城
バスで来る妻を待つなり片蔭に 川上梨屋
われよりも犬は渇きて片陰ゆく 野尻遊星
旅人に慈悲の片蔭築地塀 雨宮昌吉
片蔭の町に古りゆく写真館 戸川稲村