夏の鳥の季語をまとめました。
夏に繁殖期を迎える鳥が多いため、夏鳥とされるものが数多くあります。
そこでまず今回は、小鳥でも一番小さな鳥たちを19種紹介します。
全長10〜15cmほどの、スズメと同じか、それよりも小さな鳥たちです。
それではどんな小鳥が夏の季語となっているのか、見てみましょう。
(およその大きさの順に並べています。)
夏の鳥の季語・小鳥2(スズメより大きい小鳥)
夏の鳥の季語・陸鳥(全長27cm以上の陸の鳥)
夏の鳥の季語・水鳥(水辺の鳥)
夏の鳥の季語・その他(他の季節の鳥の夏の季語)
動物
藪雨(やぶさめ)
三夏
ウグイス科の10.6cmほどの鳥で、全体に茶褐色で眉の白い筋が目立つ。足はオレンジ色。
4月末から5月頃に日本に渡来し、秋に南方へ帰ってゆく。
低山帯の沢筋などの茂った暗い林床(森林の地表面)を好む。
藪に棲み、巣を作り繁殖をする。
シ、シ、シ、シという高く細い声でさえずる。
鷦鷯(みそさざい)に似ているところから、しおさざいの名もある。
- やぶさめや山路なほ咲くすひかづら 水原秋櫻子
- やぶさめや漸くにして里曲(さとわ)の灯 木津柳芽
- やぶさめや草のにほひの霧吹きて 田中敦子
日雀(ひがら)
三夏
四十雀よりも小さく、11cmほどの鳥。
頰は白く喉元は黒いが、四十雀のようにネクタイの模様はない。
頭に短い冠羽があり、少し逆立って見える。
亜高山帯の森林に住み、繁殖期には繰り返し鳴き続ける。
樹上性で二足飛びで枝移りし、細い枝にさかさにとまったりする。
- 日雀来てをり朝の日が森に 柴田白葉女
眼白(めじろ)
三夏
スズメより小さく11.5cmほどの鳥。羽は鮮やかな黄緑色で、目の周りの白が目立つ。
花の蜜が好きで、公園や庭でも見かけることができる。
春には桜や梅の花によく来ている。樹林帯に住むが、低山帯の椿の多い林にたくさんいる。
夏に繁殖期を迎えることから、夏の鳥とされている。
- 見えかくれ居て花こぼす目白かな 富安風生
- 梅に来て松にあふれし目白かな 木津柳芽
小雀(こがら)
三夏
四十雀より小さく、日雀よりは大きい鳥で、全長12.5cmほど。
頭に黒いベレー帽をかぶっているように見えるので、ナベカブリという俗称もある。
亜高山帯の森林に生息している。
2~5月頃にさえずりが聞かれる。
小雀も枝や松かさに逆さまにとまることが多い。
- 朝夕や峯の小雀の門馴るゝ 一茶
雪加(せっか)
三夏
スズメより小さく、淡い黄褐色の鳥で、全長12.5cmほど。
黒い縦斑があり、眉紋が白い。
ヒッヒッと鳴きながら飛び、チャッチャッと鳴きながら降りてくる習性がある。
草原に生息し、チガヤの多い草原を好む。
草むらの中を、尾羽を上下させながら小刻みに動き回る。
- 雪加鳴き端居にとほき波きこゆ 水原秋櫻子
- 聞くならば青田の雪加夙く来ませ 川島彷徨子
- 雪加鳴き残り時間の飛びゆくも 大島民郎
- うつむきて聴くに雪加は母の声 福永耕二
仙台虫喰(せんだいむしくい)
三夏
ムシクイ科の鳥で、黄色がかったオリーブ色、目の上に白い眉紋がある。
目細虫喰に似ているが、頭上中央に細長い灰緑色の線がある。
全長12.5cmほどで、スズメより少し小さい。
低山帯の落葉広葉樹林の、低木や藪の多い場所で繁殖し、チョチョビィーという鳴き声でさえずる。
筒鳥はこの鳥の巣に托卵する。
4月中旬に飛来し、9月下旬から10月上旬にかけて南方へ渡ってゆく。
- 朝餉の座仙台虫喰をきくは誰 水原秋櫻子
- 仙台虫喰よべの酔まだ残りをり 大澤ひろし
眼細(めぼそ)
三夏
ムシクイ科のメボソムシクイで、鶯に似た全長13cmほどの鳥。
背面は灰黄緑色で、眉に黄色味を帯びた白っぽい細い斑がある。
夏に高山帯の林、苔や藪の多い所で繁殖し、10月頃には暖地に移動する。
5月から8月頃には樹上でチリチブチリチブなどとさえずる。
- 目細鳴き大富士に向く火山灰(らば)の道 杉山岳陽
- 目細鳴き雲間かがやく間の岳 中村信一
- 眼細鳴き岳は眼深に雲の笠 大島民郎
野鶲(のびたき)
三夏
全長13cmほどの鳥で、日本に夏鳥として飛来し、冬は本州南部か南方へ帰ってゆく。
頭と背面は黒、腹部が白の鳥で、胸は淡いオレンジ色、翼と尾の付け根に白い紋がある。
草原に住み、4~10月まで草茎の上にとまって地鳴きやさえずりをする姿がみられる。
さえずりはピリピョー、ピーチョイチョイなど。
空中へ飛び出して波状に飛んでは、昆虫を捕食する。
草の根本に枯れ草で巣を作る。
- 野鶲のすこし仰向く風情かな 飯田蛇笏
- 茨の芽野鶲きたりかくれける 水原秋櫻子
- 野鶲の水湧くごとく囀れり 山田みづえ
柄長(えなが)
三夏
四十雀の仲間で、丸っこい体に長い尾羽があるところからその名がついた。
白と黒の羽で、北海道のシマエナガには目の上に黒い部分はなく、頭部は白い。
全長は13.5cmほどだが、尾が長いため体は小さく、キクイタダキやミソサザイとともに日本で最も小さい鳥の一つといわれる。
低地や山地の落葉広葉樹林に住み、群れで行動する。
枝から枝へ目まぐるしく動き回る。
繁殖期には苔を集めて木の枝に巣を作り、外側には蜘蛛の糸でウメノキゴケを貼り付ける。
内部には鳥の羽毛やウサギの毛などを敷く。
- 枯蔓に縋り夕日の柄長啼き 小林黒石礁
五十雀(ごじゅうから)
三夏
青みがかった灰色の羽、目のところに横に黒い筋が入る。全長13.5cm。
落葉広葉樹林に生息し、木の幹に頭を下にして回りながら降り、虫をついばむ。
フィーフィーフィーとさえずる。
- むづかしやどれが四十雀五十雀 一茶
- 鳴き倦みて蔓ぶらんこの五十雀 長谷川久代
駒鳥(こまどり)
三夏
頭部から胸にかけてと尾がオレンジ色、腹は灰色の鳥。全長14cm、スズメ大である。
ヒンカラカラカラというさえずりが美しい。
亜高山針葉樹林の谷筋、沢筋、苔むした藪の多いところに住む。
渓流で5~6月頃によくさえずりが聞かれ、瀬音のなかに響く声は趣がある。
- 駒鳥の声ころびけり岩の上 園女
- 駒どりに明けゆく木々の梢かな 室生とみ子
- 駒鳥や崖をしたたる露のいろ 加藤楸邨
- 駒鳥の声ゆく方へ霧ゆけり 宮原双聲
野鵐(のじこ)
三夏
14cmほどのスズメ大の、黄緑色がかった褐色の小鳥で、低山帯の林で繁殖する。
アオジと似ているが、目の周りに白いアイリングがあり、腹面の黒い縦斑が少ない。
藪の中にいることが多くあまり見かけないが、鳴き声が美しく古くから飼い鳥とされていた。
5~7月頃にさえずる時には木の上へ出るので見つけやすい。
冬は南方へ渡る。
- 野鵐なり森の水甕の水揺りしは 千代田葛彦
茅潜(かやくぐり)
三夏
岩鷚(いわひばり)の仲間で、全長14cmほどの鳥。
高山地方のハイマツ林に生息する。
藪の中にひそんで枝から枝へこまかく動き回るので、その名がついた。
5~7月にさえずる時は藪の上へ出るので見つけやすい。
- かやくぐり聴き天近き尾根わたる 福田蓼汀
- 茅潜森に咲く花みな白し 渡辺夏舟
小瑠璃(こるり)
三夏
全長14cmほどのスズメ大の鳥で、頭から背が暗青色、腹が白い。雌は褐色で腹は白い。
ルリビタキに似ているが、脇にオレンジ色がない。
5月頃に渡来し、繁殖をする夏鳥。
山地の広葉樹林の、低木や藪の多い所に生息し、昆虫などを採食する。
さえずりはチッチッチッ、チュルチイ、チリーチピなど。
9月頃には南方へ渡ってゆく。
- 小瑠璃鳴き朝は雫す森の径 原柯城
- 小瑠璃鳴くや岨(そば)の垂水に濡るるみち 木津柳芽
- 小瑠璃鳴き風吹きはらふ山毛欅(ぶな)の雨 中村信一
黄鶲(きびたき)
三夏
ヒタキ科の夏鳥で、日本に4月ごろ渡来し、秋に南方へ帰ってゆく。全長14cm。
背中が黒く、眉と喉から胸と腰が鮮やかな黄色をしている。
落葉広葉樹林に棲み、5、6月の繁殖期には美しいさえずりが聞かれる。
- 黄鶲や沢辺に多き薊の座 水原秋櫻子
- 黄鶲に焦土のごとく富士くだる 角川源義
- 黄鶲やあはれ継橋はなやかに 渡辺夏舟
鮫鶲(さめびたき)
三夏
ヒタキ科の夏鳥で、5月ごろ日本に飛来して繁殖し、冬に南方へ帰ってゆく。全長14cm。
6月から8月にかけて、亜高山帯の高い木の上で繁殖する。
全体に暗褐色の小鳥。
山雀(やまがら)
三夏
全長14cmほどの四十雀の仲間で、胸から腹が赤茶色をしている。
頭部の黒い模様に特徴があり、見分けやすい。
広葉樹林に住むが、大きい木のある公園や人家近くでも見られる。
枝や松かさに逆さにとまったり、木の実を足にはさんで叩き割ったりする。
昔は飼いならされ、山雀がおみくじを引く芸などもあった。
- 山雀の高音に成るも別れかな 去来
- 山雀の群れ鳴くに遇ふ翠微かな 高鳥三津子
四十雀(しじゅうから)
三夏
全長14.5cmほどの鳥で、頬が白く、胸に縦に黒いネクタイのような模様がある。
日本全国の平地から山林に分布し、2月頃から6月頃まで、ツツピー、ツツピーと元気にさえずる声が聞かれる。
公園や庭の木などにもやってくる。
- 四十雀のつれ渡りつゝ鳴きにけり 原石鼎
- 四十雀松はすがしき芽をのぶる 篠田悌二郎
瑠璃鶲(るりびたき)
三夏
ヒタキ科の14.5cmほどの鳥で、初夏には高地に繁殖し、冬には平地へ下りてくる。
頭から背面、尾にかけて青色、脇に黄色、眉に白い斑が入る。雌は褐色をしている。
樹上では尾羽をピクリと下げては揺さぶり、きびきびと動く。
亜高山帯の針葉樹林に住み、5~8月頃に繁殖する。
さえずりはピョロリヒョロリと聞こえる。
- 沢を吹く歯朶の嵐に瑠璃鶲 山谷春潮
- 松風の声となりゆく瑠璃鶲 渡辺夏舟