二月はまだまだ寒いですが、暦の上では春を迎え、春の花が早くも咲き始める時期になります。
中でも梅は百花の魁ともいわれ、他の花にさきがけて春を告げる花です。
二月の中旬ごろより次々に見頃を迎える梅の花。
品種も多数あり、それぞれに花姿、香りが楽しめます。
長い冬を乗り切ったあとに梅の花が咲いているのを見つけた時、春の到来の喜びを一層感じられることでしょう。
それでは春の梅に関する季語を、植物・時候・天文・生活・行事ごとに見ていきましょう。
春の季語一覧
植物
梅(うめ)
初春
早春に百花の魁として咲く、清楚で香りも良い花。
中国から渡来し、春告草(はるつげぐさ)、香栄草(こうばえぐさ)とも呼ばれ、古来万葉集から多数歌に詠まれている。
白色五弁の丸い花びらのものが多いが、紅色、淡紅色、八重咲きなど多数の品種がある。
わが園に 梅の花散る ひさかたの 天(あめ)より雪の 流れ来るかも
万葉集 大伴旅人
君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる
古今和歌集 紀友則
色よりも 香こそあはれと 思ほゆれ 誰が袖触れし 宿の梅ぞも
古今和歌集 詠人知らず
- 梅の一種…野梅(やばい)、臥龍梅(がりょうばい)、青龍梅(せいりゅうばい)、残雪梅(ざんせつばい)、残月梅(ざんげつばい)
- 盆梅(ぼんばい)、鉢の梅、枝垂梅(しだれうめ)、梅が香(うめがか)、白梅(はくばい)、老梅(ろうばい)、梅林、梅園、梅の里、梅屋敷、梅の宿、庭梅、梅の主(うめのあるじ)、梅見、観梅(かんばい)、夜の梅・闇の梅(闇夜でも梅の香りがすること)
- 鶯宿梅(おうしゅくばい…村上天皇が紀貫之の娘に梅の木を献上させた時、その枝に「勅なればいともかしこしうぐひすの宿はと問はばいかが答へむ」との歌が結んであり、天皇が梅の木を返したという故事より)
- 飛梅(とびうめ、菅原道真が左遷される時に詠んだ歌に由来。梅の木が太宰府まで飛んできてその庭に生えたという故事)
- 箙の梅(えびらのうめ、源平合戦で生田の森での戦いにおいて、梶原源太景季が箙に梅の枝をさして戦ったという故事から)
- さればここに談林の木あり梅の花 宗因
- むめがゝにのつと日の出る山路かな 芭蕉
- しら梅に明る夜ばかりとなりにけり 蕪村
- 梅咲いて十日に足らぬ月夜かな 暁台
- 夕月や納屋も厩も梅の影 内藤鳴雪
- 白梅や蕊の黄解けて真盛り 鈴木花蓑
紅梅(こうばい)
初春
白梅より花期がやや遅く、蕊が長く濃艶な趣がある。
白梅には早春の冷ややかさと気品があり、紅梅には暖かさ、艶やかさが感じられる。
- 紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ 芭蕉
- 紅梅や亡き娘の部屋の小窓より 阿部みどり女
- 紅梅の月の絹暈(かさ)着る夜かな 松本たかし
- 母好みし紅梅昏れて忌日暮る 大野林火
時候
梅見月(うめみづき)
仲春
春の季語「如月(きさらぎ、陰暦二月の異称)」の傍題。
梅の花が咲き香る時期。
きぬさらぎ、小草生月(おぐさおいづき)、初花月(はつはなづき)、梅つさ月、雪解月(ゆきげつき)
天文
梅東風(うめごち)
三春
春の季語「東風(こち)」の傍題。
東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ
菅原道真
こち風、正東風(まごち)、強東風(つよごち)、夕東風(ゆうごち)、朝東風(あさごち)、雲雀東風(ひばりごち)、鰆東風(さわらごち)、桜東風(さくらごち)、あめ東風、いなだ東風
生活
梅見(うめみ)
初春
梅の花を見に出かけること。
春になったばかりで真っ先に咲き始める梅の花。まだ寒さの中で咲く姿は凛々しく気品がある。
また梅は香り高く、梅見で人々は香りも楽しんだ。
- 絵馬堂に雪のひととき梅見人 大竹きみ江
- 縫ひかけの物が床几(しょうぎ)に梅見茶屋 潮原みつる
行事
梅花節(ばいかせつ)、梅佳節(ばいかせつ)
初春
春の季語「建国記念の日」の傍題。二月十一日。
戦前は紀元節といい、一旦廃止されたが、昭和四十一年に建国記念の日として国民の祝日となった。
建国の日、建国祭(けんこくさい)、建国の日、紀元節(きげんせつ)
- 後山の蘭にあそびて梅花節 飯田蛇笏
北野梅花祭(きたのばいかさい)、梅花御供(ばいかごく)
初春
春の季語「北野菜種御供(きたのなたねごく)」の傍題。
北野天満宮で二月二十五日に行われる、梅花祭と梅花祭野点大茶湯(のだておおちゃのゆ)。
菅原道真忌に行われ、約九百年の歴史がある。
天神御忌(てんじんごき)、道真忌(みちざねき)
- 西陣の帯の売れゆき梅花祭 星島野風