寒さも厳しくなるこの時期、体を温めてくれるあったかい食べ物が欲しくなりますね。
免疫力を上げて風邪に負けない体になるためにも、冬にはお鍋がぴったりです。
家族や仲間たちと一緒に同じ鍋をつつけば、心も体もぽっかぽか。
身体の芯からあたたまって、元気にこの冬も乗り切りましょう。
冬の食べ物の季語、今日は鍋編をお送りします。
冬の食べ物の季語一覧
鍋、汁物(このページです)
おもに「汁」の名がつくもの
巻繊汁(けんちんじる)
三冬
大根、人参、ごぼう、里芋、こんにゃく、豆腐などを油で炒めて出汁で煮込み、醤油または味噌仕立てにする。
巻繊とは千切りの材料を油で炒めて巻くという意味。
禅僧が中国から伝えた料理の一つといわれる。
蕪汁(かぶらじる)
三冬
蕪を実とした味噌汁のこと。
大根を実にしたら大根汁となる。
- 炉話に煮こぼれてゐる蕪汁 高浜虚子
- 奥人の大飯食ふや蕪汁 大須賀乙字
- 賽の目の豆腐は白し蕪汁 川島奇北
干菜汁(ほしなじる)
三冬
大根や蕪の切り落とした葉を干したもの(干菜)を実とした味噌汁。
貧乏な暮らしの代名詞のような言葉であった。
- 冷腹を暖め了す干菜汁 高浜虚子
粕汁(かすじる)
三冬
酒粕を入れた味噌汁。
塩鮭、豚肉、野菜、椎茸、こんにゃく、油揚げ、ネギなどを入れる。
- 糟汁に酔うて外出をやめにけり 増田龍雨
納豆汁(なっとうじる)
三冬
納豆をすりつぶして味噌にすり込んで作る味噌汁。
具は豆腐、ねぎ、油揚げ、根菜類など。
東北地方では家庭料理としてよく作られる。
- 砧尽きて又の寝覚や納豆汁 其角
- 朝霜や室の揚屋の納豆汁 蕪村
三平汁(さんぺいじる)
三冬
北海道の代表的な郷土料理の一つ。
鰊(にしん)の糠塩漬けを主に利用していたが、塩漬けにした鮭、鱈などの魚も用いる。
昆布で出汁をとり、塩鮭は頭やあらも一緒に入れ、大きめに切った根菜類をたっぷり入れて炊いた料理。
汁をたっぷり盛ることのできる深くて大きい皿を三平皿という。
濃餅汁(のっぺいじる)
三冬
煮込み料理の一つで、里芋、人参、大根、椎茸、こんにゃく、油揚げ、焼き豆腐などを出汁で煮て醤油で濃いめの味付けをし、片栗粉でとろみを加えたもの。
薩摩汁(さつまじる)
三冬
鶏肉、または豚肉を根菜、芋、こんにゃくなどと煮込み味噌仕立てにし、ネギを散らしていただく料理。
鹿児島県の郷土料理。
葱汁(ねぎじる)
三冬
ネギを実とした味噌汁のこと。
- 僕等(しもべら)のよよと盛りけりねぶか汁 召波
- ほと染めし夕日の窓や根深汁 皿井旭川
河豚汁(ふぐじる)
三冬
河豚の身を入れた味噌汁。
調理法が進んでいなかった昔は、中毒で命を落とす者も少なくなかった。
- あら何ともなや昨日は過ぎて河豚汁 芭蕉
- 魨(ふぐ)汁に又本草のはなしかな 其角
- 逢はぬ恋おもひ切る夜やふぐと汁 蕪村
- 胃を病んで猶(なほ)こりやまず鰒汁 尾崎紅葉
- めらめらと燃ゆる火急や河豚汁 石井露月
- 河豚鍋や愛憎の憎煮えたぎり 西東三鬼
狸汁(たぬきじる)
三冬
昔は狸の肉を野菜とともに煮て、味噌汁仕立てにした。
冬になると脂肪が乗っておいしいとされ、肉を雪の中に埋めて臭いを抜いて調理した。
今では狸汁といえば、こんにゃくを使って大根や人参、芋と一緒に煮て味噌汁にした精進料理のことになっている。
- 狸汁座中の一人ふと消えぬ 佐藤紅緑
闇汁(やみじる)
三冬
それぞれが他の人に教えずに持ち寄った具材を鍋に入れ、煮て食べる。
その際、電気を消して部屋を暗くして、何が入っているか見えないようにする。
食べたものを言い当てたりして、楽しみ親睦を図るものである。
- 闇汁の杓子を逃げしものや何 高浜虚子
- 煮くづれてあやなきものや闇夜汁 佐久間法師
おもに「鍋」の名がつくもの
寄鍋(よせなべ)
三冬
肉、魚介類、野菜などさまざまな材料を入れた大きな鍋で、出汁と醤油、塩、酒、味噌、みりんなど味付けもさまざまで煮込む料理。
- 寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ 杉田久女
ちり鍋
三冬
白身魚や貝を、ねぎ、白菜、春菊、三つ葉などの野菜や椎茸、豆腐などとともに湯で煮ながらポン酢醤油などでいただく料理。
鯛ちり、河豚ちり、鱈ちり、牡蠣ちりなど。
石狩鍋(いしかりなべ)
三冬
鮭を用いた北海道の鍋料理。
生の鮭の身とアラを、白菜、椎茸、大根、人参、ねぎ、えのき、豆腐などとともに昆布出汁で煮て味噌仕立てにする。
塩汁鍋(しょっつるなべ)
三冬
秋田の郷土料理で、塩汁で味付けをする料理。
塩汁とは、ハタハタ、イワシ、ニシンなどを麹と塩漬けにして重石をし、汁の上澄みをこした魚醤のこと。
白身の魚、ネギ、芹、ほうれん草、椎茸、豆腐、しらたきなどを入れて帆立貝の貝殻を鍋にして煮る。
葱鮪(ねぎま)
三冬
ネギとマグロの脂の多い部分を、醤油、酒、みりん、出汁などで煮ながら食べるもの。
豆腐を入れることもあり、また薬味に粉山椒などを入れてもよい。
- ねぎま汁風邪のまなこのうちかすみ 下村槐太
紅葉鍋(もみじなべ)
三冬
紅葉とは鹿の肉のことを指し、鹿の肉を用いた鍋料理を紅葉鍋という。
鹿は身体の邪気を払い、血行をよくするとして、冬の薬喰いといった。
花札の紅葉の十月から、紅葉が鹿の隠語となった。
または百人一首の「奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」和歌が由来との説もある。
桜鍋(さくらなべ)
三冬
馬肉を味噌仕立てにした鍋物のこと。
桜は馬の隠語となっている。
東京には江戸時代から桜鍋や馬肉料理の店があり、けとばし屋などと呼ばれた。
牡丹鍋(ぼたんなべ)
三冬
猪の肉を用いた鍋料理のこと。
猪肉は薄切りにし、ネギ、豆腐、芹、椎茸などとともに出汁と味噌、または醤油で煮ながら食べる。
牡丹は猪の隠語となっている。
また、山鯨は猪の肉のことである。
肉を食べることを良しとしない風潮が強かった時代、猪の料理を出す店は猪と言わず、山鯨と言い換えて店を出していた。
鼈鍋(すっぽんなべ)
三冬
すっぽんの肉を白菜、ねぎ、豆腐などと一緒に煮た料理。
すっぽんは形が丸く、マルという異名があるので、まる鍋ともいわれる。
鮟鱇鍋(あんこうなべ)
三冬
鮟鱇の肉や肝を豆腐、ねぎ、春菊、きのこ、人参などとともに煮ながら食べる料理。
鮟鱇は冬がいちばんおいしく、旬である。
- 鮟鱇鍋河豚の苦節もなかりけり 正岡子規
- 鮟鱇鍋箸もぐらぐら煮ゆるなり 高浜虚子
- 炭はねて眉根を打ちぬ鮟鱇鍋 中田余瓶
鯨鍋(くじらなべ)
三冬
鯨肉を水菜とともに煮た鍋料理。
- おのおのの喰過がほや鯨汁 几董
- 鯨汁熱き啜るや外吹雪く 大谷繞石