大豆はお味噌、納豆など和食には欠かせない大事な食材です。
大豆の収穫を終えた初冬に、農村などでは数件の共同作業で自家用の味噌を作りました。
また冬に旬を迎える野菜は、寒さで甘みがぎゅっと詰まっています。
お漬物にして長期保存できるようにし、日々の食卓を彩りました。
寒い中での作業は厳しいですが、寒中こそおいしく作れるものも多く、人々は様々な食品を加工して作ってきました。
今回は冬の食べ物の季語、大豆製品、芋、漬物、玉子、加工品編をお送りします。
大豆、芋、漬物、玉子、加工品(このページです)
大豆製品
湯豆腐
三冬
鍋に昆布をしいて豆腐を煮て、ネギやかつお節、柚子など薬味を添えて醤油でいただく。
凍豆腐造る(しみどうふつくる)
晩冬
厳冬の戸外で豆腐を凍らせ、天日に干して凍み豆腐を作る。
氷豆腐、寒豆腐ともいい、高野山が産地で有名だったことから高野豆腐ともいう。
零下10度をこす寒さの中での厳しい作業である。
納豆
三冬
蒸した(または茹でた)大豆を納豆菌で発酵させた発酵食品。
昔は蒸した大豆を稲の藁苞(わらづと)で包み、稲わらについている納豆菌で発酵させた。
健康にも良いとしてさまざまな食べ方、料理に応用されている。
- 有明や納豆腹を都まで 一茶
- 納豆にあたたかき飯を運びけり 村上鬼城
- 柳橋かけて納豆売にけり 籾山梓月
- 納豆や貧乏致す源三位 小杉余子
- 藁苞のすがすがしさの納豆かな 中村楽天
味噌搗(みそつき)
三冬
味噌をつくるために、茹でた大豆を熱いうちに臼と杵を用いて搗くこと。
搗いた大豆は米や麦の麹と塩を入れて混ぜ、桶に入れて熟成させる。
- 味噌搗いて冬の支度を完うす 相島虚吼
生姜味噌(しょうがみそ)
三冬
味噌に酒を混ぜてのばし、鍋を火にかけて弱火で火を通し、すりおろした生姜を混ぜ合わせたもの。
好みでごまを入れる。ごはんやおでん、様々な食材につけていただく。
体を温める効果がある。
芋
藷粥(いもがゆ)
三冬
さつまいもを賽の目切りにして入れたおかゆ。
甘みがあり、体が温まる食べ物。
焼薯、焼芋(やきいも)
三冬
石焼き芋屋のトラックが呼びかけながらゆく光景は、日本の風物詩の一つとなっている。
今は石焼が多いが、以前は壺の中に芋を吊るし、丸ごと蒸し焼きにする壷焼きが多かった。
- 甘藷(いも)焼けてゐる藁の火の美しく 高浜虚子
- 焼き芋やばッたり風の落ちし月 久保田万太郎
- 芋を焼く藁火明りや糸車 岡本 癖三酔
漬物
品漬(しなづけ)
三冬
岐阜県の飛騨地方の名産漬物。
飛騨特産の赤かぶを使っているので、漬け込まれる野菜が赤色に染まり、色あざやかな漬物になる。
きゅうり、なす、ミョウガなど夏野菜を塩漬けにしておき、秋にきのこ、赤かぶ、菊芋、白菜などと一緒に本漬けにする。
茎漬(くきづけ)
三冬、晩冬

野沢菜
大根やかぶの葉と茎を塩漬けにしたもの。
各地でさまざまな品種改良がなされ、特有の茎漬がうまれた。
高菜、野沢菜、広島菜、壬生菜、天王寺菜、近江山田大根など。
茎の桶(くきのおけ)…漬物の桶
茎の石(くきのいし)重石、漬物石
茎の水(くきのみず)…漬けると上に湧き出して来る水のこと
- 君見よや我手いるゝぞ茎の桶 嵐雪
- 茎漬や妻なく住むを問ふおうな 太祇
- 寒山寺茎圧す中を詣でけり 石橋忍月
- 一とせや今洗はるゝ茎の石 松根東洋城
酢茎(すぐき)
三冬
京都の賀茂地方特産のすぐき菜の漬物で、茎漬の一種。
植物性乳酸菌のラブレ菌が含まれていて体に良いといわれる。
お店によって漬け方や材料も少しずつ異なり、いろんな味が楽しめるお漬物。
しば漬け、千枚漬けとともに京都の三大漬物と呼ばれている。
- 大土間に日がな炉火焚く酢茎宿 中田余瓶
千枚漬(せんまいづけ)
三冬
京都名産の聖護院かぶらの漬物。
かぶを薄く切り塩漬けにした後、酸味をつけた昆布を間にはさみながら樽に漬け込む。
歯切れが良く、かぶの甘みと昆布の旨味と、乳酸菌の酸味がとてもおいしい漬物。
沢庵漬(たくあんづけ)
三冬
干した大根、または生の大根を、糠と塩でつけた漬物。
米ぬかの作用によって大根が黄色に染まる。
昆布や唐辛子、柿の皮などを一緒に漬けることもある。
切干(きりぼし)
三冬
大根を細切りにして、寒風にさらし天日干しにしたもの。
切る太さによって、割り干し大根、千切り干し大根などといわれる。
水に戻して煮物、酢の物、またはりはり漬けなどの漬物にも用いられる。
- 切干やいのちの限り妻の恩 日野草城
玉子
寒卵(かんたまご)
晩冬
寒中に鶏が産んだ卵のこと。
とくに滋養が多く、保存もきく。
- 苞(つと)にする十の命や寒鶏卵 太祇
- 寒卵割れば双子の目出度さよ 高浜虚子
- ぬく飯に落として円か寒玉子 高浜虚子
- 大つぶの寒卵おく襤褸(ぼろ)の上 飯田蛇笏
- 寒玉子包みて呉れぬ撥袱紗(ばちふくさ) 岡本松浜
加工品
寒天造る
晩冬
天草(てんぐさ)を煮て固めたところてんを、厳冬の夜の戸外に並べて凍らせ、日中は天日に干して溶かしまた凍らせるを繰り返し、乾燥させると、寒天ができる。
蒟蒻氷らす
晩冬
こんにゃくを一度煮てから夜間戸外で凍らせ、日中天日に干すのを繰り返すと、氷蒟蒻ができる。
精進料理、汁物、白和え、煮付けなどにされる。