単に雷といえば夏の季語となりますが、それぞれの季節の雷は何というのでしょうか。
雷は季節の変わり目に発生しやすく、雷が鳴ると季節の移り変わりを感じさせます。
今回は雷に関する季語をまとめてみました。
俳句を詠む際にぜひ参考になさってください。
春
春雷(しゅんらい)
三春
春に鳴る雷。
寒冷前線が通過する際に、前線付近に積乱雲が発達して雷が起こることが多い。
その春に初めて鳴る雷を初雷(はつらい)といい、多くは二十四節気の啓蟄の頃(三月六日ころ)なので、虫出しの雷(むしだしのらい)ともいう。
どろどろと桜起すや一つ雷 野坡
下町は雨になりけり春の雷 正岡子規
虫出しの巌間巌間にとどろきぬ 山口草堂
春の雷焦土しづかにめざめたり 加藤楸邨
初雷や揺がざるもの川の膚 加藤知世子
夏
雷(かみなり)
三夏
上昇気流により発達した積乱雲によって起こされる、空中の放電現象で、夏に多い。
雷に茄子も一つこけにけり 涼菟
大雷やそれきり見えず盲犬 村上鬼城
夜の雲みづみづしさや雷のあと 原石鼎
髪刈りし父とその子に雷ひびく 三橋鷹女
睡る子の手足ひらきて雷の風 飯田龍太
梅雨雷(つゆかみなり)
仲夏
梅雨の頃に鳴る雷のこと。
梅雨の終わりに多いが、梅雨の期間中の雷すべてを梅雨雷と称する。
(梅雨の終わりころに鳴ることが多いため、「梅雨明(つゆあけ、晩夏の季語)」の傍題とする歳時記もあります。)
正直に梅雨雷の一つかな 一茶
梅雨の雷いま脳天を渡りくる 石川桂郎
梅雨の雷黴くさき廊うちひゞき 加藤楸邨
不眠者に深夜とどろく梅雨の雷 相馬遷子
秋
秋の雷(あきのらい)
初秋
雷は夏に最も多いが、秋の雷も激しく鳴り響くことが多く、雨量も多い。
木鋏の縁にひびきて秋の雷 山口誓子
うき草にむらさきはしる秋の雷 篠田悌二郎
秋雷や旧会津領山ばかり 高野素十
稲妻(いなずま)
三秋
大気中の放電現象の「電光、光」をさす。
この電光が稲を実らせると信じられていたことから、稲妻と呼ばれ秋の季語となった。
稲妻を手にとる闇の紙燭(しそく)かな 芭蕉
竹深し稲妻薄き夜明がた 几董
水打って稲妻待つや門畠 一茶
稲妻のこぼれて赤し蕎麦の畑 可有
稲妻のゆたかなる夜も寝べきころ 中村汀女
冬
冬の雷(ふゆのらい)
三冬
冬に鳴る雷のこと。
日本では雷は夏が一番多く、冬が一番少ない。
夏のように長く激しいものではなく、少し鳴ってやむ場合が多い。
冬の雷家の暗きに鳴り籠る 山口誓子
一発の冬雷高し桜島 阿波野青畝
寒雷やセメント袋石と化し 西東三鬼
羽目板に木目渦まく冬の雷 菅裸馬
寒雷の天より羽毛落ち来たる 丘本風彦
雪起し(ゆきおこし)
三冬
雪国で、雪の降りだす前に鳴る雷のこと。
冬型の気圧配置が強まり、上空に強い寒気が流れ込み、日本海側に積乱雲が発達し雷が鳴った後に雪が降りだすことが多い。
雷が、寝ていた雪を起こすようなので雪起しと呼ばれた。
唯一つ大きく鳴りぬ雪起し 高浜虚子
雪起し仏間の暗き加賀の国 西村公鳳
軒裏に榾(ほた)高く積み雪起し 吉沢卯一
雪起し障子震はし過ぎにけり 本間翠雪
鰤起し(ぶりおこし)
三冬
初冬の頃、北陸地方では鰤の定置網量がはじまり、このころ鳴る雷を鰤起しと呼ぶ。
鰤漁のはじまり、そして豊漁の知らせとされた。
茶畑の空はるかより鰤起し 飯田龍太
鰤起し一つとゞろく佐渡泊り 高木良多
荒海や霰を飛ばす鰤起し 吾妻青原
一つ疑ひ二つたしかや鰤起し 神蔵器