夏の鳥の季語、4回目は水鳥の季語を集めました。
「水鳥」は冬の季語となっていますが、夏鳥とされ夏の季語となっている水鳥たち12種をご紹介します。
夏は水辺で鳥たちの巣を見つけることもあるかもしれません。
水鳥やヒナたちを見つけたらぜひ一句詠んでみてくださいね。
夏の鳥の季語・小鳥1(スズメより小さいか同じくらい)
夏の鳥の季語・小鳥2(スズメより大きい小鳥)
夏の鳥の季語・陸鳥(全長27cm以上の陸の鳥)
夏の鳥の季語・その他(他の季節の鳥の夏の季語)
動物
水鳥の巣(みずどりのす)
三夏
「水鳥」は冬の季語だが、「水鳥の巣」は夏の季語となっている。
具体的に「○○の巣」と詠むことが多い。
- 五月雨に鳰の浮巣を見に行む 芭蕉
- 波越えぬ契ありてやみさごの巣 曾良
- 世は水のまにまに鳰の浮巣せり 二柳
- 鳰の巣の浮み出けり宵月夜 成美
- 鳰の水尾浮巣へもどるまつしぐら 大竹きみ江
水鶏(くいな)
三夏
クイナ科の鳥で、水辺の蘆の茂みなどに生息する。
春に飛来して夏を過ごし、秋に南方へ帰ってゆく。
緋水鶏(ひくいな)の鳴き声は「水鶏たたく」といわれ、夏の朝夕にコンコンと戸を叩くような鳴き声を出す。
水鶏だにたゝけば明くる夏の夜を心短き人や帰りし
よみ人しらず 古今六帖
こむとたのめて見えずなりにけるつとめて 水鶏だに敲く音せば槇のとを心遣にもあけて見てまし
和泉式部 家集
- 此の宿は水鶏もしらぬ扉(とぼそ)かな 芭蕉
- 水鶏啼く夜や吸物に茗荷竹 北枝
- 水音は水に戻りて水鶏かな 千代女
- 挑灯を消せと御意ある水鶏かな 蕪村
- 僧ひとり門に彳(たたず)む水鶏かな 麦水
- 月の出に川筋白しくひな鳴く 召波
- 聞くうちにすゑまぼろしの水鶏かな 青蘿
- 水鶏聞て今見し夢を淋しがる 佐藤紅緑
鷭(ばん)
三夏
クイナ科の夏鳥で、湿地や水辺に生息する。
全体に黒や黒緑褐色で、額と嘴の根元が赤く(冬には赤くなくなる)、嘴の先端は黄色。
足は黄色くて長く、クルルッと低音で鳴く。
- 鷭飛びて利根こゝらより大河めく 菅裸馬
- 鷭鳴いてたそがれ近き沼ひかる 下村ひろし
- 立ち去るや沼風に来る鷭のこゑ 及川貞
- 鷭の脚しづかに動く梅雨のひま 室生とみ子
鰺刺(あじさし)
三夏
カモメ科アジサシ属の鳥で、翼と尾がツバメのように細くとがっている。
海や川で、魚の群れに上空からホバリングし狙いをつけ、急降下して魚を捕える。
- 鯵刺の突きし水輪や朝ぼらけ 原田浜人
- 鯵刺の搏つたる嘴のあやまたず 水原秋櫻子
- 鮎さしの鳴く音も雨の多摩川原 富安風生
- 鮎鷹や枝川を出る屋形船 大橋越央子
- 鯵刺の海光まとひ渓に消ゆ 角川源義
鳧(けり)
三夏
チドリ科の鳥で、足が長く、初夏に繁殖し、冬は南へ渡る夏鳥。
頭から首にかけては灰色で、灰褐色、腹は白色をしている。
ケリッケリッという鳴き声から名付けられた。
- けりないて神杉すごきながれかな 尚白
- 水札鳴くや懸渡したる岩の上 去来
- 水札の子の浅田にわたる夕かな 暁台
葭五位(よしごい)
三夏
サギ科の全体に黄褐色の鳥で、国内では最小の鷺。
初夏に渡来し、水辺の葦原で繁殖する。
葦にとまり風が吹くとそれに合わせて体を動かし、カムフラージュする。
- 葭五位の身を置く程の葭伸びず 渡辺夏舟
水薙鳥(みずなぎどり)
三夏
ミズナギドリ科の海鳥で、南方の海上に棲み、夏に北上し日本近海に渡ってくる。
全体に黒褐色の鳥。
オオミズナギドリは大型で灰色がかった褐色で腹が白く、陸上で繁殖する。
生息地では天然記念物となっている。
海猫(うみねこ)
三夏
鳴き声が猫に似ていることから名付けられた、カモメの仲間。
くちばしの先に赤と黒の模様があり、尾羽には黒い帯がある。
- 海猫の巣立つ怒濤の日なりけり 水原秋櫻子
- 沖に雲湧き海猫の雛孵へる 早坂さき
溝五位(みぞごい)
三夏
サギ科の暗褐色の夏鳥で、初夏に渡来し繁殖期を迎え、冬に南方へ帰ってゆく。
低山帯の木の上に営巣し、昆虫などを食べる。
渡来すると雄は夜にプォー、プォーという低い声で鳴く。
地面に降り餌を取る時には、胸を左右に揺らす独特の動きをする。
ほぼ日本のみで繁殖するが、絶滅危惧種である。
笹五位(ささごい)
三夏
サギ科の黒褐色の夏鳥で、初夏に渡来して繁殖し、冬には南方へ帰ってゆく。
夜行性で水辺の生き物を捕食する。
鵜(う)
三夏
ウ科の水鳥で、潜水して魚を捕える。
夏に長良川などで鵜飼が行われる。
海鵜(うみう)、川鵜(かわう)、姫鵜(ひめう)などがいるが、鵜飼に使われるのは体の大きい海鵜である。
- 波にのり波にのり鵜のさびしさは 山口誓子
- 羽根ひろぐ岩礁の鵜の黒十字 秋元不死男
- 鵜が寄りて濡身をさらに濡らしあふ 藤井亘
白鷺(しらさぎ)
三夏
サギ科の純白の鳥で、夏に繁殖期を迎える。
ダイサギ、チュウサギ、コサギなど。
- 峡(かひ)の白鷺夕日はものを細うなす 中村草田男
- 白鷺は空の帆雲をしぶかせて 三上程子
- 白鷺のつれ舞ふあたり暮のこる 森千映
- 白鷺の風を抱へて降りにけり 西山睦
青鷺(あおさぎ)
三夏
サギ科の留鳥で、国内の鷺では最も大きい。
羽は灰色、顔から首は白く、後頭部に長く黒い冠毛がある。
水辺の生き物などを捕食する。
- 夕風や水青鷺の脛をうつ 蕪村
- 夕嵐青鷺吹き去つて高楼に灯 高浜虚子
- 青鷺の吹き分れしは離宮かな 阿波野青畝