夏の季語・天文
雲の峰(くものみね)
三夏
夏にもくもくと沸き立つような積乱雲、雄大積雲を山にたとえて雲の峰という。
はるか上空まで発達し、てっぺんが平らに広がっているものを「鉄鈷雲(かなとこ雲)」、てっぺんが丸く入道のようなものを「入道雲」という。
漢詩の言葉が由来となっています。
春水満四澤
夏雲多奇峰(かうんきほうおおし)
秋月揚明暉
冬嶺秀孤松
陶淵明 四時詩
奇峰突兀(とつこつ)として火雲升(のぼ)る
杜甫
「雲の峰」の傍題: 積乱雲(せきらんうん)、入道雲(にゅうどうぐも)、雷雲(らいうん)、鉄鈷雲(かなとこぐも)、夕立雲(ゆうだちぐも)、峰雲(みねぐも)、坂東太郎(ばんどうたろう)、丹波太郎(たんばたろう)、比古太郎(ひこたろう)、信濃太郎(しなのたろう)、石見太郎(いわみたろう)、安達太郎(あだちたろう)
坂東(ばんどう、関東地方の古名)にある利根川が坂東太郎と呼ばれ、その方向に生じるところから、夏の積乱雲をも坂東太郎と呼んだ。同じように地方によって固有な名称がついている。丹波地方に出る積乱雲を丹波太郎、九州の比古太郎、長野の信濃太郎、島根の石見太郎、福島の安達太郎など。
雲の峰幾つ崩れて月の山 芭蕉
六月や峰に雲置く嵐山 芭蕉
寝てくらす麓の嵯峨ぞ雲の峰 来山
船頭のはだかに笠や雲の峰 其角
野社に太鼓うつなり雲の峰 北枝
雲の峯四沢の水の涸れてより 蕪村
取りつきて消ゆる雲あり雲の峰 千代女
しづかさや湖水の底の雲のみね 一茶
雲の峰塵の都に立ちにけり 高浜虚子
空をはさむ蟹死にをるや雲の峰 河東碧梧桐
雲の峰石伐る斧の光かな 泉鏡花
雲の峰土手行く人を呑まんとす 佐藤紅緑
口開けて向き合ふ烏雲の峰 池内友次郎
雲の峰立ち塞がりし船路かな 栗田虚船
半天に雲たのみなき峯つくる 山口誓子
厚餡割ればシクと音して雲の峰 中村草田男
生々(いきいき)と切株にほふ雲の峰 橋本多佳子