冬が近づくと落葉樹や草花は枯れ始め、枯れ葉となって落ちていきます。今回は冬枯れに関する季語・草花編です。冬枯れの景色の地理に分類される季語も集めてみました。
植物
冬枯れ
三冬
冬に野山の木も草も枯れた色に包まれ、すっかり冬枯れた景色になること。
冬の荒涼とした風景。
霜枯(しもがれ)
三冬
霜が降りるようになると、繊細な草は一晩にして急に枯れ、木々も落葉がどんどん進む。
霜により厳しい寒さにあって枯れてしまった植物のこと。
枯菊(かれぎく)
三冬
菊は花期が長く、花が終わってからも散ることがないので、花をつけたまま全体で枯れてゆく。
育つ過程で放置され、摘芯(側枝を増やし花数を増やすため、芽を摘み取る)されずに伸び放題になっているものは、茎が長く伸びて地面にまで垂れ下がり、花も少なく枯れていく様子などは侘しく見える。
枯れた菊を集めて焚くと、キク科独特の香りが漂い、風情がある。
枯芭蕉(かればしょう)
三冬
大きな芭蕉の葉が寒さや風雨に傷んで垂れ下がり、枯れている様子。
枯蓮(かれはす)
三冬
冬になると池の蓮もすっかり枯れて茶色くなる。
名の草枯る(なのくさかる)
三冬
これもその名で呼ばれる植物が、枯れている様子のことをいう。
「〜枯る」とその名前をつけて詠む。
主に秋に咲いた花の枯れた様子に用いる。
草枯(くさがれ)
三冬
草が枯れている様子。
一年草は地上部、根ともにすべて枯れ、宿根草は地上部だけが枯れて、根は残り、春になると芽を出す。
「枯草」は、個々の草が枯れていることをいう。
山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思へば
源宗于(みなもとのむねゆき)
枯蘆(かれあし)
三冬
冬には水辺の葦(蘆)も枯れ、葉を落とし、白っぽい茎だけになってしまう。
古来日本は葦が多く自生していたので、「豊葦原の瑞穂の国(とよあしはらのみずほのくに)」と呼ばれた。
「アシ」という名は「悪し」を連想させて縁起が悪いというので、「ヨシ」と呼ぶこともある。
昔から稲刈りの後に芦刈が行われた。屋根を葺いたり、すだれを作ったり、家畜の飼料にしたりと、多く用いられてきた。
枯萩(かれはぎ)
三冬
秋の七草に数えられる萩が枯れてしまった様子。
枯尾花(かれおばな)
三冬
秋の七草の一つ、尾花も種子が風に飛ばされたあと、全体が枯れてしまう。
乾燥して先がくるっと巻いているものも見かける。
枯真菰(かれまこも)
三冬
水辺に青々と群生していた真菰も、冬にはすっかり枯れ果てる。
枯歯朶(かれしだ)
三冬
冬に枯れてしまったシダ類のこと。
シダ類は常緑のものと、冬に枯れるものがある。
枯芝(かれしば)
三冬
芝生は大きく分けて、日本芝と西洋芝に分けられる。
日本芝は冬には枯れて茶色くなるが、西洋芝は冬にも枯れず緑色のままのものもある。
冬の公園などで、一面茶色く枯れた芝生など冬ならではの光景である。
枯忍(かれしのぶ)
三冬
シダ植物の一種で、冬になって枯れてしまったシノブのこと。
つりしのぶとして夏に軒下などに吊り下げて鑑賞する。
枯蔦(かれつた)
三冬
落葉してツルだけになった冬枯れの蔦のこと。
大木の幹に巻き付いていたり、塀や壁に這っている様子が見られる。
枯蔓(かれづる)
三冬
ツル性の植物が冬に枯れてしまった状態。
さまざまなものに巻き付いたり、伝いながら枯れている様子は独特の趣がある。
藤、アケビ、野葡萄、藪からし(やぶからし)、蔦、自然薯、忍冬(すいかずら)など。
枯葎(かれむぐら)
三冬
葎とは、荒地や空き地などで、蔓で絡みながら生い茂る雑草のこと。
木やお互いに蔓で絡みもつれた姿のまま枯れている様子。
強い蔓を持つことからその名がついたカナムグラは、空き地で繁殖しているのがよく見られる。
カナムグラは秋の花粉症を引き起こす雑草の一つである。
地理
枯野(かれの)
三冬
霜が降りて草もすっかり枯れ果てた、冬の野原の光景。
寒風にさらされ物寂しい景色だったり、冬の日差しに枯れ草が白く照らされたりする。
- 旅に病で夢は枯野をかけ廻る 芭蕉
- さびしさは枯野のみちをゆかしむる 中尾白雨
朽野(くだらの)
三冬
枯野のことだが、もともとは本来地名である「百済野」を朽野(くだらの)と間違ったことから、枯野の意味に誤用されるようになった。
冬田
三冬
稲を刈り取った後、そのままにされてある冬の田のこと。
一面枯れた色の田が広がるが、野鳥などもよく見られる。
枯園(かれその)
三冬
木々は落葉し、草花はしおれ枯れてしまった冬の庭。
冬ならではの風情がある。
冬の山
三冬
木も草も枯れて寂しく、岩肌もあらわな山、雪の積もった山など。
動物
枯れるに関連した、こんな季語もあります。
蟷螂枯る(とうろうかる)
初冬
冬に保護色で、枯葉の色に合わせて茶色になったカマキリ。
(しかし実際には冬になったから緑色から茶色になったというわけではなく、もともと個体によって緑色のもの、茶色のものと色は決まっていて、脱皮のタイミングで色が変わることもあるということですが、まだ詳しいことは解っていないようです。)
さいごに
道端でこのような枯れた植物を見つけたら、その景色で一句作ってみてはいかがでしょうか。
寒さに耐えて生き続ける植物たちへの愛おしさも増してくることでしょう。