秋の海の季語

雀と海

秋の海に関する季語をまとめました。

夏には海水浴客で賑わった浜辺も、秋には落ち着いた元の海辺の景色にもどり、秋の海は天候によってさまざまな様相を見せます。

秋の海、秋の波、秋の潮、高潮、秋の浜、秋渚、不知火など、秋に海を訪れた際には、これらの季語でぜひ一句詠んでみてくださいね。

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地理

秋の海(あきのうみ)

三秋高い空と海

澄んだ秋の空の下、やや高くなった波が岸に寄せては返す秋の海。
台風が来て波も荒く黒々と見える海、秋の静寂の中でどこか寂しさの漂う海など、夏とはまた違った表情を見せる。

秋の波(あきのなみ)、秋濤(しゅうとう)

彼の船の煙いま濃し秋の海 松本たかし
秋の海木の間に見えてはろかなり 安住敦
秋の海澄みきはまれば仏燈も 佐野まもる
嘶(いなな)きに秋の白波たゞ遥か 中岡毅雄
鳶低く山を離れず秋の海 入倉朱王

秋の潮(あきのしお)

三秋潮流

秋は春と同じように、潮の干満の差が大きくなる。
春潮が華やかで明るさを伴うのに対し、秋潮はもの淋しさが漂う。
秋晴れの下の潮の流れ、冬に向かう時の寒流の勢いが増して黒々とした潮の流れなど。

秋潮(あきしお)…春潮は「しゅんちょう」と読みますが、秋潮は「しゅうちょう」と読むことは少なく、「あきしお」と読みならわします。

ゆるやかに帆船はひりぬ秋の潮 高浜虚子
わかれんと秋の夜潮の音もなし 加藤楸邨
秋潮や海女には海女の好む唄 五所平之助
やはらかき枕へひびき秋の潮 沢木欣一
秋潮がまぶしかりけり杣の旅 花村つね
秋潮の削り削るやあきつしま 長谷川櫂

初潮(はつしお)

仲秋満月の海

陰暦八月十五日の大潮のこと。
月見のときは満潮になり、葉月潮ともいう。

葉月潮(はづきしお)、望の潮(もちのしお)

初汐や竹の裏行く人の声 蓼太
嶋二つ初汐満ちて日の赤き 佐藤紅緑
葉月潮海は千筋の紺に澄み 中村草田男
海神のくらき笑ひや葉月潮 三橋鷹女
初潮の風たかく飛ぶ鷗かな 石原舟月
引際の白を尽くして葉月潮 岡本眸

高潮(たかしお)

仲秋高い波

台風に伴って陸に押し寄せて来る高波のこと。
台風は非常に気圧が低いため海面が盛り上がり、強風に押された高波が上陸して、しばしば被害をもたらす。

風津波(かぜつなみ)

高潮ののちの青海舟大工 平畑静塔
高潮の予報のなかに飯炊きをり 泉春花

盆波(ぼんなみ)

初秋台風に伴う波

盂蘭盆(うらぼん)のころの高波のこと。
発達した台風の影響で海のうねりが高波となって打ち寄せる。

盆荒(ぼんあれ)

盆浪や命をきざむ崕(がけ)づたひ 飯田蛇笏
盆の荒れ三方岩の壁の海 山口誓子
海の胸より生れつぎ盆の波白し 但馬美作
屋根越しに盆波ひびく夕べかな 畑菊香

秋の浜(あきのはま)

三秋夕暮れの海

夏の間は海水浴客で賑わう浜辺も、秋になると人が少なくなり、どこか寂しいが平穏な本来の浜の姿に戻る。

秋渚(あきなぎさ)、秋汀(しゅうてい)、浜の秋(はまのあき)

皆で歩し後ひとり歩す秋の浜 三橋鷹女
日没の灯のすぐ馴染む秋の浜 殿村菟絲子
少年一人秋浜に空気銃打込む 金子兜太
秋浜へ下りゆく何も手に持たず 樋口和子

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不知火(しらぬい)

仲秋

九州の有明海と八代海の沿岸で、夜に見られる光の屈折現象。
最もよく見られるのが陰暦八月朔日の夜で、干潮時を利用して漁を行うときの灯、漁火が光源となり、無数に広がったり消えたりする。

龍燈(りゅうとう)、竜灯(りゅうとう)

不知火に酔余の盞(さん)を擲(なげう)たん 日野草城
盞(さん)…さかずき
不知火を見る丑三つの露を踏み 野見山朱鳥
不知火の夜を繚乱と炎えつづく 牧野麦刃
不知火を見てなほ暗き方へゆく 伊藤通明

この記事を書いた人
こよみ

このサイトではテーマごとに季語を集め、画像とともに一目でわかりやすいようにまとめました。季語の持つ多彩な魅力をぜひお楽しみください。

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