夏の鳥の季語、今回はスズメより少し大きい小鳥たちを集めました。
アオジやカワセミなど比較的見つけやすく親しみのある鳥たち、そして内陸部では目にすることのないイソヒヨドリなど、13種をご紹介します。
夏の鳥の季語・小鳥1(スズメより小さいか同じくらい)
夏の鳥の季語・陸鳥(全長27cm以上の陸の鳥)
夏の鳥の季語・水鳥(水辺の鳥)
夏の鳥の季語・その他(他の季節の鳥の夏の季語)
動物
蒿雀(あおじ)
三夏
スズメより少し大きい全長16cm。
背中が緑がかった褐色、腹が淡い黄色で黒い小斑点がある。
頭から背にかけて青っぽい灰色、目先と額が黒いのが特徴。
チッチョロチョロ、チリリリなどと明るい林の藪の中などでさえずる。
冬には人家近くの地上で草の種などの餌をついばんでいる姿も見られる。
- 青鵐鳴き新樹の霧の濃く淡く 水原秋櫻子
- 白山を梢に青鵐降る如し 中村若沙
- 暗き枝の絶えずゆれをり鳴く青鵐 堀口星眠
頰赤(ほおあか)
三夏
頬の部分が赤褐色をしているためこの名がついた。全長16cmほどの鳥。
白い喉の下に黒斑による帯、胸部には赤茶色の帯があり、見分けられる。
警戒する時には頭羽を逆立て、しきりに尾羽を開閉する。
草原や高原帯で繁殖する。耕地などでも見かけることが多い。
5月から7月にかけてさえずりがよく聞かれる。
- 朝の間にいきせきわたる頰赤かな 丁水
- 頰赤の鈴割れごゑや空澄む日 堀口星眠
- 夕日さす松や頰赤のとまり鳥 柏樓
便追(びんずい)
三夏
山地の林に生息する、全体に暗褐色の全長16cmほどの鳥。
高い木の上でさえずり、上空に舞い上がりまた元の場所に戻ることを繰り返す。
鳴き声や動作がヒバリに似ているため、木雲雀とも呼ばれるが、セキレイの仲間である。
尾羽を上下に振りながら地上を歩く。
- 鳴きをとめしびんづいそこに木蔭冷ゆ 田中灯京
- 便追の声の渦あり牧草地 堀口星眠
- 便追や羽黒の朝のきつね雨 皆川盤水
大瑠璃(おおるり)
三夏
ヒタキ科の青い鳥で、顔から胸は黒く、腹は白い。雌は褐色。全長16.5cm。
4、5月頃に渡来し繁殖をする夏鳥。さえずりが美しい。
- 瑠璃鳥の色のこしとぶ水の上 長谷川かな女
- この沢やいま大瑠璃のこゑひとる 水原秋櫻子
- 瑠璃鳴くやなほ林中の夕明り 戸川稲村
翡翠(かわせみ)
三夏
カワセミ科の留鳥で、羽色が鮮やかな翡翠のような色をしている。全長17cm。
木の枝から水中の魚をたくみに捕える。
- かはせみや絵の具を流すおのが影 馬光
- 川蟬の風かをるかとおもひけり 蓼太
- 翡翠の打ちたる水の平かな 松根東洋城
- 翡翠や露の青空映りそむ 石田波郷
- 翡翠の影こんこんと溯り 川端茅舎
岩鷚(いわひばり)
三夏
高山の岩場などで見られる全長18cmほどの鳥で、頭部は灰色で体は赤褐色をしている。
あまり人を恐れず近寄ることもある。
さえずりがヒバリに似ていて、岩場に住むためにその名がついた。
雌雄同色である。
- 絶巓(ぜってん)はさびしきかなや岩ひばり 福田蓼汀
- 岩雲雀懺悔の坂を落ち行けり 角川源義
- 天涯に雲屯(たむろ)せり岩ひばり 岡田日郎
葭切(よしきり)
三夏
ヨシキリ科の鳥で、5月ごろ飛来し、8月に南へ帰ってゆく。
葭原に群棲して巣を作る。
オオヨシキリ(18.5cm)は大きな声で鳴くので、行々子の異名がある。
コヨシキリは全長13.5cmほど。
- 一しきり竹に柳に行々子 白雄
- 葭切のさからひ鳴ける驟雨かな 渡辺水巴
- つなぎ捨てし筏照る日や行々子 小沢碧童
- 月やさし葭切葭に寝しづまり 松本たかし
- 葭切の夜鳴ひとこゑ水明り 山口草堂
雨燕(あまつばめ)
三夏
アマツバメ科の鳥で、4月頃に渡来し繁殖期を迎え、秋に南方へ帰る。全長20cm。
垂直にそそり立つ崖や、滝の裏の崖などに巣を作り、群で棲む。
空中で長く飛び続ける。また高速で飛翔することから、カザキリ、クモキリともいわれる。
- 雨燕怒濤がふさぐ洞の門 原柯城
- あまつばめ仰ぎ梅天低からぬ 相馬遷子
- あまつばめ雲の遠(をち)より明けそめて 望月たかし
黒鶫(くろつぐみ)
三夏
その名の通り黒く、腹は白く黒い斑点が入り、くちばしと足は黄色の鳥。
全長21.5cmでムクドリよりやや小さめ。
夏鳥として飛来し山地で繁殖し、冬は南へ去ってゆく。
山地の落葉広葉樹林、混合林などに住み、藪の中にひそんでいることが多く見つけにくい。
4~6月頃の早朝または夕方に、美しい声でキョコキョコキーなどとさえずる。
- 黒つぐみあけぼのの富士雲払ふ 篠田悌二郎
- をだまきの門出て数歩くろつぐみ 相馬遷子
- ことごとく椴(とど)は枯れ伏す黒鶫 米谷静二
鵤(いかる)
三夏
全長23cmほどのムクドリくらいの大きさで、黄色いくちばし、体は灰色で羽と頭と尾は黒い。
木の枝にとまっている時はあまり動かず、よく通る澄んだ声でさえずる。
木の実や豆を口に入れてクルクルと回しながら縦に割る習性があることから、豆回しともよばれる。
- 豆粟に来て鵤(いかるが)や隣畑 松瀬青々
- いかる来て起きよ佳き日ぞと鳴きにける 水原秋櫻子
赤腹(あかはら)
三夏
腹部の側面がオレンジ色、羽は暗褐色、全長23.5cmのムクドリ大の鳥。アイリングが黄色。
5月から8月ごろに繁殖する。
低山から亜高山帯にかけての山林、カラマツ林のように明るい林に住む。
澄んだ声でさえずる。
冬は南方に渡ってゆく。
秋に渡ってくる冬鳥に「シロハラ」がいる。
- あかはらの青蔦ごもり雛育つ 田中灯京
- 赤腹に波立ち暮るる湖白し 原柯城
眉白(まみじろ)
三夏
雄は全体に黒く、目の上に白い眉のような斑が入るのでその名がついた。全長23.5cm。
雌は暗褐色。
夏に高山帯の沢や谷沿いのよく茂った暗い林で繁殖する。
深い藪の中にいることが多く、なかなか姿を見せない。
5~7月頃にしきりに澄んだ声でさえずる。
冬は南方へ渡る。
- 眉白をきゝとめし岩に霧かゝる 山谷春潮
- まみじろに日がな明るく滝の音 目黒十一
磯鵯(いそひよどり)
三夏
岩礁の多い海岸に生息する、全長23.5cmのムクドリほどの大きさの鳥。
雄の羽は青色で光沢があり、腹部は赤茶色。
ツツピーコチュチュリーとさえずる。
- 磯鵯や諸鳥いまだ加はらず 森田峠
- 磯鵯や汐木のどれも濡れてをり 鈴木雹吉