大自然に暮らす鳥たちにとって、厳冬期は試練の時期です。食物が少なくなり雪に閉ざされた中でも、鳥たちはたくましく生きています。今回は冬の季語となっている大型の陸鳥たち、そして架空の鳥の季語を集めてみました。
大型の陸上の鳥
鷹(たか)
三冬
鷲につぐ猛禽で、タカ目タカ科に属する鳥のうち、小さめのものをいう。
飛ぶ力も強く、遠くから空中や地上で獲物を見つけて捕食する。
鷹匠は鷹狩のために飼い慣らし、獲物を捕らえさせる。
隼(はやぶさ)
三冬
最近では宇宙探査機の名前や、東北・北海道の新幹線の名称にもなっているはやぶさ。
「速い翼」からはやぶさと名付けられたといわれる。
空高くから小型の鳥類、ウサギなどをの獲物を見つけると、時速400kmという速さで急降下して、強靭な足で捕えるという習性がある。
鷲(わし)
三冬
鷹と同じく、タカ目タカ科に属する鳥だがもっとも大きいものをいう。
大鷲、犬鷲、尾白鷲など。
鷲の尾羽は、矢羽に多く使われ、また茶の湯の羽箒(はねほうき)にも用いられる。
梟(ふくろう)
三冬
夜行性で鋭い聴覚と視覚をもつ。木の枝で待ち伏せて獲物の場所を正確に特定して音もなく飛び、獲物を捕らえる。ねずみなどの小動物や小鳥、昆虫などを食べる。
ミミズクより大きく、耳のように見える羽角(うかく)はない。
昔、獰猛なイメージから梟は母鳥を食べると考えられていたところから、母食鳥という異名がある。
木菟(みみずく)
三冬
梟よりも小さめで、耳のように見える羽角(うかく)がある。
日本に生息する主な木菟のうち、青葉木菟(あおばずく、羽角はない)と木葉木菟(このはずく、「声の仏法僧」と呼ばれる)の2種類は夏の季語となっている。
冬の季語となっているのは、主に大木葉木菟(おおこのはずく)、虎斑木菟(とらふずく)、小木菟(こみみずく)、鷲木菟(わしみみずく)の4種である。
大木葉木菟(おおこのはずく)、虎斑木菟(とらふずく)、小木菟(こみみずく)、鷲木菟(わしみみずく)…木菟の種類
寒鴉(かんがらす)
晩冬
冬に見かける鴉。
冬は食物が少なくなるので、ますます市街地に来てゴミ置場などあさることも多くなる。
日本で普段見られるのは、嘴太烏(はしぶとがらす)と嘴細烏(はしぼそがらす)の2種。
嘴太烏はやや大きく、くちばしの太さも太めで上嘴が曲がっているので見分けられる。
鳴き声も、カー、カーと鳴くのは嘴太烏で、嘴細烏はガーガーと濁った声で鳴く。
毎日まだ薄暗い早朝にねぐらから飛び立ち、一定のところに集まり、一定のコースをたどってまたねぐらへと帰ってゆく。「ねぐら帰り」と呼ばれる。
想像上の鳥
暖鳥(ぬくめどり)
三冬
古典文学「温故日録(おんこちにろく)、杉村友春・著」に出てくる、おそらくは想像上の生き物。
鷹が寒い夜に、捕らえてきた小鳥で足をあたため、朝になると放ってやるという。そして放った鳥の飛び去る方角を見て、その日はその鳥を捕らえないようにするという。
俳諧歳時記「滑稽雑談(こっけいぞうだん)、四時堂其諺(しじどうきげん)・著」には、その鷹は鶻(こつ)と記されている。鶻はハヤブサの雄のこと。
また、辞書などによると「温め鳥(ぬくめどり)」との記載があり、上記の意味のほか、親鳥が雛を羽の下に抱いてあたためること、またはその雛。という意味がある。
羽交(はがい)の下の温め鳥、恩愛こそはあはれなれ
浄瑠璃 百合若大臣
寒苦鳥(かんくちょう、かんくどり)
三冬
仏教で釈迦が説いた教えを記録した経典に出てくる鳥で、想像上の鳥。
インドのヒマラヤに住む鳥が、夜には寒苦をなげいて鳴き、夜が明けたら巣を作ろうというが、朝になり太陽が出ると寒さを忘れてしまう。
人間の怠け心を戒める話。
印度の境、大雪山に鳥あり、名づけて寒苦鳥といふ。この鳥、夜、寒を苦しみて、鳴きて曰く、寒苦身を責む、夜明けば巣を造らん。明けてまた鳴く。今日死を知らず、何が故に巣を作りて無常の身を安穏にせんと
篗纑輪(わくかせわ)、千梅・著
鳥のようで鳥でない、こんな季語もあります
晩鳥(ばんどり)
三冬
夜行性のムササビやモモンガのこと。
夜に木から木へと飛び移るようすが鳥のようなところからいわれる。
野鳥観察案内
北本自然観察公園
全国にはたくさんの野鳥を観察できる公園があると思いますが、私も体験したことのある初心者でも楽しめるバードウォッチング教室をご紹介します。
埼玉県の北本自然観察公園では、定期的にバードウォッチングの参加者を募集しています。
双眼鏡も貸し出してくれ、双眼鏡の使い方、野鳥の見つけ方も教えてもらいながら、園内を歩いて行きますので初心者でも楽しめます。
(最初に双眼鏡の使い方のレクチャーがあるので、開始時刻に間に合うように集合しましょう。)
公園内には森や水辺、湿地など、多様な生息域があり、多くの種類の鳥を観察することができます。
また公園内の鳥たちも、公園内は安全ということがわかっていて、鳥たちと人間との信頼関係ができているので、時に近くまで寄って来て間近で観察できることもあります。
鳥たちとの信頼関係を崩さないよう、鳥たちを驚かすようなことをしないように注意しながら、そっと観察しましょう。