初秋は、秋の三ヶ月を初秋、仲秋、晩秋と分けたときの始めの一ヶ月で、ほぼ八月にあたります。
二十四節気では立秋、処暑の期間(八月七日頃から九月七日頃)になります。
今回は秋の時候の季語のなかでも、初秋に分類される季語を集めました。
仲秋、九月の時候の季語
晩秋、十月の時候の季語
三秋の時候の季語
時候
初秋(はつあき)
初秋
秋の始まり。日中の気温はまだ暑い中にも、どこか秋の気配を感じるようになる。
空や雲、風も秋らしくなり、夜には虫の音が聞こえる。
初秋(しょしゅう)、新秋(しんしゅう)、首秋(しゅしゅう)、上秋(じょうしゅう)、孟秋(もうしゅう)、肇秋(ちょうしゅう)、蘭秋(らんしゅう)、早秋(そうしゅう)、桐秋(とうしゅう)、盆秋(ぼんしゅう)、秋初め(あきはじめ)、秋浅し(あきあさし)、秋口(あきぐち)
- 初秋や障子さす夜とささぬ夜と 太祇
- 初秋や余所の灯見ゆる宵の程 蕪村
- 初秋や小雨ふりこむ膳の上 成美
- 初秋や木かげの砂の水の紋 島村元
- 初秋の風吹き下ろす机かな 増田龍雨
八月(はちがつ)
初秋
陽暦八月はほぼ初秋にあたる。
八月七日か八日に立秋を迎え、暦の上では秋となるが、まだ猛暑きびしい日々が続く。
「終戦記念日」と「盆」(ともに初秋)があり、鎮魂の月でもある。
- 八月の大風南より来る 佐藤紅緑
- 八月の行方や稲に波走り 米澤吾亦紅
- 杉山に八月の翳たちあがる 黛執
- 黒板負ふごと八月の駅の夜空 友岡子郷
- 八月や坂のをはりに人が佇つ 進藤一考
文月(ふみづき)
初秋
陰暦七月の異名で、ほぼ陽暦の八月にあたる。
旧暦での七夕や、盂蘭盆会などの行事が行われる月である。
文月(ふづき)、七夕月(たなばたづき)、文披月(ふみひろげづき)、女郎花月(おみなえしづき)、秋初月(あきはづき)、涼月(りょうげつ)、親月(しんげつ)、餞月(せんげつ)、蘭月(らんげつ)、相月(そうげつ)、七夜月(ななよづき)、めであい月(めであいづき)
- ささ降りや文月の花落ち流し 長谷川かな女
- 文月や屋根美しき観世音 野村喜舟
- 文月や甕の浮藻もやゝに錆ぶ 皆川白陀
- 文月や水をはなるる空の色 福原十王
立秋(りっしゅう)
初秋
二十四節気の一つで大暑の後、八月七日か八日頃にあたる。
今朝の秋(けさのあき)、今日の秋(きょうのあき)、秋立つ(あきたつ)、秋来る(あきくる)、秋さる、秋に入る(あきにいる)
- 秋たつやはじかみ漬もすみきつて 来山
- 秋やけさ耳のうしろの桐の風 成美
- 江のひかり柱に来たりけさのあき 蒼虬
- 立秋の星うつくしや二歳駒 中川四明
- 立秋の紺落ち付くや伊予絣 夏目漱石
- 秋たつや川瀬にまじる風の音 飯田蛇笏
残暑(ざんしょ)
初秋
立秋以後に残る暑さ。八月中はまだまだ残暑が厳しい。
一度涼しくなってから、また暑さが戻ることも多い。
残る暑さ(のこるあつさ)、秋暑(しゅうしょ)、秋暑し(あきあつし)、餞暑(せんしょ)
- かまきりの虚空をにらむ残暑かな 北枝
- 行雲のうつり替れる残暑かな 魚素
- 水をのむ猫の小舌や秋あつし 徳田秋聲
- 秋暑し叔父の墓標は見当らず 徳川夢聲
- 山門出て人の世の道秋暑し 雨宮昌吉
秋めく(あきめく)
初秋
気候が秋らしくなること、秋の兆しが現れること。
秋づく、秋じむ
- 書肆(しょし)の灯にそぞろ読む書も秋めけり 杉田久女
- 箒木に秋めく霧の一夜かな 西島麦南
- 秋めきて川音夜の山のぼる 石原舟月
- 長崎の坂の秋めく石畳 森冬比古
- 秋めくと思ふ貝煮る音の中 岡本眸
新涼(しんりょう)
初秋
初秋の頃に感じる涼気のこと
秋涼し(あきすずし)、秋涼(しゅうりょう)、初めて涼し(はじめてすずし)、初涼(しょりょう)、涼新た(りょうあらた)、新たに涼し(あらたにすずし)、早くも涼し(はやくもすずし)、早涼(そうりょう)
- 秋涼し松にかゝりて天の川 蓼太
- 秋涼し雨の過行く雄上川 樗良
- 新涼や月光うけて雨しばし 本田あふひ
- 新涼や紫苑をしのぐ草の丈 杉田久女
- 新涼の水の浮かべしあひるかな 安住敦
処暑(しょしょ)
初秋
二十四節気の一つで、立秋の後十五日、八月二十二、二十三日にあたる。
処暑は、暑さが収まるという意味。
- 鳰の子のこゑする処暑の淡海かな 森澄雄
- 処暑の僧漢語まじりにいらへけり 星野麦丘人
- 山を見ていちにち処暑の机かな 西山誠
八月尽(はちがつじん)
初秋
陽暦の八月が終わること。
夏休みや避暑の時期が終わる時。
葉月尽(はづきじん)
- 八月尽の赤い夕日と白い月 中村草田男
- とめどなく八月尽の滝の音 百合山羽公