冬の花の季語、最後は観葉植物や蘭、その他です。
室内で楽しめる観葉植物や蘭は、冬でも毎日花や緑を楽しめる貴重な植物です。
庭植えの草花や花木とは違った世話の仕方がありますが、花を長く保ち、来年も花を咲かせるようなちょっとした育て方のコツを覚えてしまえば、長く楽しめます。
日々の変化の発見など、植物とともに暮らしているからこそ詠める一句があるかもしれません。
冬もぜひ植物を身近に感じてくださいね。
観葉植物
ポインセチア
仲冬
大きな苞(ほう)と呼ばれる葉が深紅色になり、花のように見えるのが特徴の観葉植物。
ピンク色、白色のものもある。
中央に総苞状に黄緑色の花をつける。
クリスマスに飾られることから、クリスマスフラワーとも呼ばれる。
メキシコ原産の常緑低木で、1828年に米国の外交官でメキシコ大使のポインセットが発見したことから名がついた。
日本名は、やや黒みを帯びた鮮やかな紅色を猩々緋(しょうじょうひ)というところから、猩々木(しょうじょうぼく)と命名された。
- ポインセチア愛の一語の虚実かな 角川源義
- ポインセチアただ一行の愛をこめ 正木千冬
- ポインセチア第九合唱高まれり 清水凡亭
アロエの花
三冬
アロエは冬にまっすぐに伸びた茎の上に、朱色の筒状の花を多数つける。
肉厚の葉の周囲には棘があり、キダチアロエの葉肉部分は薬用にも用いられる。
アロエベラの葉肉部分はヨーグルトなどに入れられ食用になっている。
- アロエ咲く風の酷しき流人島 鈴木理子
- 花アロエ四五本活けて鬱を断つ 窪久美子
蝦蛄葉仙人掌(しゃこばさぼてん)
仲冬
葉のように見える緑色の扁平の茎に多数の節があり、各節がシャコに似ていることからその名がついた。
鉢を覆うようにして垂れ、クリスマスの頃に、枝の先端にピンク色や白色の花をつける。
ブラジル原産の多年生多肉植物。
似たものに蟹葉仙人掌(かにばさぼてん…各節の周囲が蝦蛄葉仙人掌のように尖っていなくて、丸みを帯びている)があるが、春に開花する。
(普通の「仙人掌(さぼてん)」は夏の季語です)
- しゃこさぼてん撩乱と垂れ年暮るる 富安風生
- しゃこばさぼてん祭りのごとく咲きにけり 堀千代
- クリスマスカクタス苦き恋もして 大石悦子
蘭
寒蘭(かんらん)
初冬
ラン科シュンラン属(シンビジウム属)の常緑多年草。暖地の乾燥した山に自生している。
十一月頃から一月にかけての寒い時期に咲く。
細い花茎を伸ばし、細い花弁が大きく一文字か正三角形の花をつける。
花色は淡黄緑色、紅紫色、紅色を帯びたものなど。
花は香りが良く、優美な気品をたたえている。
- 寒蘭の一茎に灯のともさるる 青柳志解樹
- 寒の蘭どの香に染まることもなし 桜井京子
カトレア
三冬
数多い洋蘭の中でその華やかさから花の女王との異名を持つ。
熱帯アメリカの山岳地帯に分布し、高い樹木の樹皮や岩の上に着生する。
品種により、春咲き、秋咲き、冬咲きがある。
- 回想の輪にカトレアの鉢華やか 小川孝
- 古稀を祝ぐとてカトレアの胸飾 辻田克己
- カトレアを挿し花嫁の父となる 大石悦子
その他
葉牡丹
晩冬
花ではないが、その葉が牡丹の花を思わせることからこの名がついた。
アブラナ科のキャベツの改良種で、紫紅色、クリーム色のものがある。ヨーロッパ原産。
春になると茎が立ってきて、菜の花のような花を咲かせる。
花時計などにも使われる。
- 葉牡丹にうすき日さして来ては消え 久保田万太郎
- 葉牡丹やわが想ふ顔みな笑まふ 石田波郷
甘蔗の花(かんしょのはな)
仲冬
砂糖黍(さとうきび)の花。
砂糖を取るために栽培される熱帯の植物で、花は茎の先に大きな灰白色の花穂を出す。
荻やススキに似た姿をしており、別名は花甘蔗、砂糖荻という。
日本では主に沖縄、九州などで栽培されている。
- 甘蔗の花遠き波より夜が来て 山城美智子
- 耶蘇島は汐曇りして甘蔗の花 辻三枝子
- 月夜々にまどかになりぬ甘蔗(きび)の花 船田松葉女
冬の花の咲き方に関する季語
返り花(かえりばな)
初冬
本来は春から夏にかけて咲く花が、十一月頃の小春日和に、また時ならぬ花を咲かせること。
元禄、天明期の俳人が好んで用いた季語である。
- 凩に匂ひやつけし帰花 芭蕉
- かへり花暁の月にちりつくす 蕪村
- 日に消えて又現れぬ帰り花 高浜虚子
- 久方の光が霜に帰り花 松瀬青々
- 薄日とは美しきもの帰り花 後藤夜半
- 返り咲くつゝじわが家にこの家に 高浜年尾
- 帰り花きらりと人を引きとどめ 皆吉爽雨
- 帰り花咲けば小さな山のこゑ 飯田龍太
室咲(むろざき)
三冬
春に咲く花を、冬に温室の中で早く咲かせた花のこと。
正月用の梅、黄梅、木瓜の盆栽などを室に入れて早く咲かせたりした。
最近ではビニールハウスでシクラメン、胡蝶蘭などさまざまな春の花を早く咲かせたものがある。
- 内蔵の古酒をねだるや室の梅 其角
- 妻のほか人なき日日の室の花 上村占魚
- 開かんと室芥子殻を落しけり 福田甲子雄