秋の七草

桔梗の花

秋の七草についてまとめてみました。

スポンサーリンク

秋の七草の由来

萩、尾花、葛、撫子、女郎花(おみなえし)、藤袴、桔梗

秋を代表する七つの草花。
万葉集の山上憶良の歌から生まれました。

  • 秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花
  • 萩の花尾花葛花なでしこが花をみなえしまた藤袴朝顔が花

上記の歌の朝顔が何であるかには諸説がありますが、桔梗のこととされています。

秋の七草の季語

秋の七草(あきのななくさ)

三秋

秋七草(あきななくさ)、秋の名草(あきのなぐさ)
  • 馬でゆく秋の七草ふんでゆく 長谷川素逝
  • 子の摘める秋七草の茎短か 星野立子
  • 教室や馬穴にあふれ秋七草 秋沢猛

萩(はぎ)

萩の花初秋

マメ科の多年草。
宮城野萩(ミヤギノハギ)、山萩(ヤマハギ)、木萩(キハギ)などの総称。

芽子(がし)、芳宜(ほうぎ)、鹿鳴草(しかなぐさ)、鹿妻草(しかつまぐさ)、庭見草(にわみぐさ)、初見草(はつみそう)、玉見草(たまみぐさ)などと古来さまざまな名前で呼ばれ、詩歌に多く詠まれてきました。

萩の語源は古い株から新芽を出すので「生え芽(はえき)」と呼ばれたことから名付けられました。

「萩」という漢字も、秋を代表する花として作られた国字です。
「萩月」は陰暦八月の異称ともなっています。

屋根や垣の材料、また食用や薬草としても用いられました。茶室の庭などに使われる柴垣で、萩の枝で作ったものを萩垣と言います。

山萩、鹿鳴草(しかなきぐさ)、鹿妻草(しかつまぐさ)、玉見草(たまみぐさ)、庭見草(にわみぐさ)、初見草(はつみそう)、古枝草(ふるえぐさ)、萩の花、萩刈る、乱れ萩、こぼれ萩、初萩、野萩、萩見、萩原、萩散る、もとあらの萩(株の根元がまばらに生えている萩)、白萩、小萩、真萩、萩の戸、萩の宿、萩の主、括り萩、寝たる萩
  • 水ありや家鴨の覗く萩の下 闌更
  • 萩にふり芒にそゝぐ雨とこそ 久保田万太郎
  • まどろむやさゝやく如き萩紫苑 杉田久女
  • 仏像のまなじりに萩走り咲く 細見綾子
  • 散りごろの萩にやさしき雨ひと日 能村登四郎

尾花(おばな)

尾花、ススキ三秋

薄、芒(すすき)の傍題。
穂がけものの尾に似ているので尾花と呼ばれます。
日本各地に自生するイネ科の多年草。

十五夜のお月見に飾るのに使われます。
茎葉を乾かして屋根を葺くのにも用いたり、炭俵を編んだり、家畜の飼料にもしました。

芒原、芒野、糸芒、むら芒、花芒、穂芒、初尾花、芒散る、鬼芒、真赭の芒(まそほのすすき、穂が赤みを帯びた大きな芒)、真赭の糸、一叢芒(ひとむらすすき)、一本芒(ひともとすすき)、縞芒、鷹の羽芒(たかのはすすき…葉に淡い黄色の矢羽型の斑点があるもの)
  • 山は暮て野は黄昏の芒かな 蕪村
  • 取り留むる命も細き薄かな 夏目漱石
  • 常よりも今日の夕日の芒かな 尾崎迷堂
  • 座布団に芒の絮(わた)が来てとまる 富安風生
  • 薄なびく汽罐車が曳く四十輌 加藤楸邨
  • 老医師に磧(かはら)芒のなびく道 飯田龍太

葛の花(くずのはな)

葛の花初秋

マメ科のつる性多年草。
紫紅色の花が晩夏から初秋にかけて葉の付け根に咲きます。
根を葛粉として用い、吉野葛が有名です。

秋の風に吹かれて葉が翻ると葉の裏が白いので、古今集以来「裏見」を「恨み」に掛けて歌われてきました。
花には甘い芳香があります。

葛咲く、葛の葉、真葛(葛の美称。同じ漢字で「さねかずら」と呼ぶ場合は実葛、美男葛のものもあるので注意)、葛鬘(くずかずら)、真葛原、葛掘る
  • 葛の花水に引ずる嵐かな 一茶
  • 山路に石段ありて葛の花 高浜虚子
  • 奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 水原秋櫻子

撫子(なでしこ)

ナデシコの花晩夏、初秋

夏の季語、秋の季語とすることもあります
ナデシコ科の多年草。
花の可憐さから「撫でし子」と名付けられました。
花びらの先が糸のように裂け、繊細な表情を見せています。

中国から入ってきた石竹(セキチク)を唐撫子(からなでしこ)と呼ぶのに対し、日本の撫子を大和撫子と呼びました。

大和撫子、唐撫子、河原撫子、川原撫子、雲井撫子、高嶺撫子、霜降撫子、藤撫子、浜撫子、姫撫子、白撫子(夏衣の襲色目の一つ。表は白、裏は濃色)
残り撫子(秋)
常夏(撫子の一品種、夏)
  • 撫子の節々にさす夕日かな 成美
  • 撫子や濡れて小さき墓の膝 中村草田男
  • 撫子や波出直してやや強く 香西照雄
  • 大阿蘇の撫子なべて傾ぎ咲く 岡井省二
  • 撫子やあやとりのやうに会話して 藤田直子

女郎花(おみなえし)

オミナエシの花初秋

オミナエシ科の多年草で、日本各地の山地に自生しています。
黄色い小さな花を粟飯に似ていることから、粟花ともいわれました。
また盆の供花としても使われることから、盆花とも。

根は薬としても用いられました。
ひらがなで書く場合、歴史的仮名遣いの「をみなへし」と書かれることが多いです。

おみなめし、粟花、ちめぐさ
  • 手折りてははなはだ長し女郎花 太祇
  • 雨の野や人もすさめぬ女郎花 闌更
  • 女郎花月夜のねむり黄にまみれ 六角文夫
  • 日蔭より伸びて日南や女郎花 酒井黙禅
スポンサーリンク

藤袴(ふじばかま)

フジバカマの花初秋

キク科の多年草。
草丈1mあまり、初秋に茎先に淡紅紫色の小さい花を密につけます。

乾いてくると香りがあり、漢名では蘭草(らんそう)、香草、香水蘭と呼ばれます。
よく似ている花の鵯花(ひよどりばな)には香りがありません。
藤袴の葉は三裂し、鵯花は楕円形の葉をしています。

花が藤色で、弁の形が筒状で袴をはいているような姿なのでこの名がつきました。
薬草としても用いられたそうです。

あららぎ(古名)、蘭草、香草、香水蘭
  • うつろへる程似た色や藤袴 北枝
  • 藤袴白したそがれ野を出づる 三橋鷹女
  • 幾世経し蔵の罅(ひび)かも藤袴 松井葵紅
  • 喪の列に入る順ありし藤袴 青木綾子
  • 藤袴手折りたる香を身のほとり 加藤三七子
  • 想ひごとふと声に出づ藤袴 永方裕子

桔梗(ききょう)

桔梗の花初秋

日本各地に自生するキキョウ科の多年草。
山上憶良の詠んだ歌の「朝貌の花」は桔梗だと言われています。

古くは漢名で読み「きちこう」と呼んでいました。
古今集(紀友則)「きちかうの花。あきちかう野はなりにけり白露の置ける草葉も色変りゆく」

サワギキョウ(ミゾカクシ属)、イワギキョウ、チシマギキョウ(ホタルブクロ属)などは別属の花です。
野生種の桔梗のほか、園芸種の二重桔梗、白桔梗、八重白桔梗、ウズバキキョウ、また花びらの閉じた袋咲きのものもあります。

根は漢方薬「桔梗湯」として去痰、鎮咳に用いられ、また屠蘇の材料にも使われています。
五つに分かれた花の形は、家紋の図柄としても多く使われています。

きちこう
  • 手触れなば裂けむ桔梗の蕾かな 阿波野青畝
  • 熱下りて桔梗まこと鮮しき 日野草城
  • 桔梗を焚きけぶらしぬ久谷窯 加藤楸邨
  • 桔梗の白の切り込みくるひなく 永井東門居

花の名所

秋の七草寺めぐり

埼玉県長瀞町では、七つのお寺にそれぞれ秋の七草が一種類ずつ植えられていて、「秋の七草寺めぐり」ができます。

期間中は「七草俳句コンクール」が開催されます。
(実施期間など詳しくは長瀞町観光協会のHPをご覧ください。)

洞昌院7月中旬~10月下旬
尾花道光寺9月上旬~10月下旬
遍照寺8月上旬~9月中旬
撫子不動寺7月下旬~9月上旬
女郎花真性寺7月中旬~9月上旬
藤袴法善寺9月上旬~10月下旬
桔梗多宝寺7月下旬~9月上旬
この記事を書いた人
こよみ

このサイトではテーマごとに季語を集め、画像とともに一目でわかりやすいようにまとめました。季語の持つ多彩な魅力をぜひお楽しみください。

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました