秋簾、秋日傘、秋団扇など、夏の名残の風物詩 秋の季語

簾と青紅葉

今回は、秋になってもなお残っている、夏の名残の風物詩の季語を集めました。

日傘、うちわ、蚊帳、すだれなど、まだ残暑が厳しくしまえないもの、また使われなくなりそのまま捨て置かれているもの、それぞれにその季語の持ち味がありますので、これらの季語にぜひ挑戦して一句詠んでみてくださいね。

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生活

秋の蚊帳(あきのかや)

三秋蚊帳

暑さも和らぎ秋の空気になっても、まだ蚊が残っているので、秋になってもつる蚊帳のこと。

秋の㡡(あきのかや)、蚊帳の果(かやのはて)、蚊帳の名残(かやのなごり)、蚊帳の別れ(かやのわかれ)、九月蚊帳(くがつかや)

蚊屋とりて天井高き寝覚めかな 許六
さす月もあな冷(すさま)じの九月㡡 几董
月明き障子の遠し秋の㡡 原石鼎
朱の緒のなほ艶めくや別れ蚊帳 前田普羅
よみかきの燈ともす㡡のなごりかな 西島麦南
蚊帳除れて黍(きび)の葉擦(はずれ)に寝る夜かな 松本たかし
吊ればすぐ風来る蚊帳のわかれかな 鈴木真砂女
燈して影をつくりぬ別れ蚊帳 原コウ子
睡り覚めて怒りさめたる秋の蚊帳 藤田湘子

秋扇(あきおうぎ)

初秋扇、扇子

秋になっても暑い日にはまだあおぐのに用いる扇のこと。
また、使われなくなり捨て置かれている扇のこともいう。

秋扇(しゅうせん)、秋の扇(あきのおうぎ)、扇置く(おうぎおく)、捨扇(すておうぎ)、忘れ扇(わすれおうぎ)
花扇(はなおうぎ)…秋の行事の季語。近世の宮中行事で、七夕に陽明家(近衛家)から宮中に献上した花束。七種の草花を扇型に束ねて檀紙に包んだもの。

朝雨を竹に聞く日や扇置く 嘯月
扇おくこゝろに百事新たなり 飯田蛇笏
秋扇や高浪きこゆ静けさに 水原秋櫻子
仕付け糸のせたる今朝の秋扇 永井東門居
板の如き帯にさされぬ秋扇 杉田久女
秋扇や寂しき顔の賢夫人 高浜虚子
秋扇や生まれながらに能役者 松本たかし

秋団扇(あきうちわ)

三秋畳の上の団扇

秋に入ってもなお用いられる団扇、また涼しくなってもう使われなくなった団扇のこともいう。

秋の団扇(あきのうちわ)、団扇置く(うちわおく)、捨団扇(すてうちわ)、忘れ団扇(わすれうちわ)

秋団扇人の告白古りにけり 佐藤惣之助
障子しめて忘れ団扇となりにけり 長谷川零余子
我れも泣く秋の団扇を見つめつゝ 高橋淡路女
この疲れただごとでなし秋団扇 稲垣きくの
秋団扇たまたまあれば使ひけり 成瀬櫻桃子

秋日傘(あきひがさ)

初秋日傘をさして歩く人

日傘といえば夏の季語だが、立秋を過ぎてもてもまだ日差しは強いので、日傘が手放せない。
秋になってもさす日傘のことを秋日傘という。

たたむとき翼めくなり秋日傘 片山由美子
波音や抱けばつめたき秋日傘 井上弘美

秋簾(あきすだれ)

仲秋簾、すだれ

夏の強い日差しを除けるために用いた簾を、秋に入っても吊ったままにしてあるもの。

簾の名残(すだれのなごり)、簾名残(すだれなごり)、簾外す(すだれはずす)、簾納む(すだれおさむ)、簾の別れ(すだれのわかれ)、秋簾(あきす)

初秋の簾に動く日あしかな 正岡子規
大いなる秋の簾も風のまま 波多野爽波
日が隅にありていつより秋簾 斎藤玄
山の音きてゐる秋の簾かな 小林康治
秋簾木の間に吊りて野点かな 松本たかし
(野点(のだて)…屋外で抹茶を点てて楽しむ茶会のこと)

行水名残(ぎょうずいなごり)

仲秋行水をする赤ちゃん

夏の間は風呂を沸かさずに行水ですませていたのを、秋も半ばになって行水もそろそろ終わりにすること。

行水の果(ぎょうずいのはて)

行水の名残りや月も七日過ぎ 大須賀乙字
五位鳴いてそゞろ行水名残かな 河東碧梧桐
(五位…五位鷺、ゴイサギのこと)

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簟名残(たかむしろなごり)

仲秋竹のむしろの上でくつろぐ猫たち

簟(たかむしろ)とは、竹で編んだ敷物で、夏の座敷に敷いて涼しく過ごすもの。
秋も半ばに入り、簟を片付けること。

簟の別れ(たかむしろのわかれ)

簟名残におきし銀煙管(ぎんぎせる) 松瀬青々
山添ひに馴れ簟名残かな 萩原麦草

風炉の名残(ふろのなごり)

晩秋茶の湯の風炉

茶の湯で、夏の間は風炉(夏用の炉)に釜をかけて湯を沸かしていたのを片付け、陰暦十月の亥の日に炉が開かれる。(炉開(ろびらき)…初冬の季語)
それまでの風炉を惜しんで開かれる茶会。

風炉名残(ふろなごり)、名残の茶(なごりのちゃ)、名残月(なごりづき)

一杓に湯気の白さよ風炉名残 井沢正江
夕影に水屋暗さや風炉名残 桜木俊晃
師が亡くて名残の風炉の灰ならす 佐野美智

この記事を書いた人
こよみ

このサイトではテーマごとに季語を集め、画像とともに一目でわかりやすいようにまとめました。季語の持つ多彩な魅力をぜひお楽しみください。

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