冬は越冬のため、北方から鳥たちがたくさん渡って来ます。とくに水辺には、たくさんの水鳥たちが群れで生息していることが多く、観察できる機会も多くなります。今回は冬の季語となっている水鳥たちを集めてみました。
水鳥
水鳥(みずとり)
三冬
水上で暮らす鳥の総称。
秋に渡って来て春に帰ってゆくものが多く、日本では冬に見ることが多いため、冬の季語となっている。
寒雁(かんがん)
三冬
冬の雁のこと。
秋に北方から渡って来るので秋の季語となっているが、春にまた北方に帰ってゆくまで冬の間、日本の湖沼や池、河川、水田などで過ごす。
早朝になると餌を求めて飛び立つ。
真雁(まがん)、菱喰(ひしくい)、灰色雁など。
冬鷺(ふゆさぎ)
三冬
鷺のうち、日本で冬を過ごす留鳥の小鷺(こさぎ)、青鷺(あおさぎ)のこと。
白鷺は大鷺、中鷺、小鷺がいるが、小鷺は足の先が黄色いのが特徴。
夏には頭の後ろに冠毛が二本あるが、冬はそれが落ちている。
湖や河川、水田などで小魚類を獲る。
また、病気や怪我をして、南に渡りが出来なくて日本に留まることになったものを「残り鷺」という。
鴨(かも)
三冬
水鳥の一種で、傍題にあるようにたくさんの種類がいて、秋冬に渡って来る。
「鴨場」もあるように、狩猟鳥としても有名。
青頸(あおくび)、真鴨(まがも)、小鴨(こがも)、葭鴨(よしがも)、葦鴨(あしがも)、蓑鴨(みのがも)、蓑葭(みのよし)、緋鳥鴨(ひどりがも)、尾長鴨(おなががも)、星羽白(ほしはじろ)、金黒羽白(きんくろはじろ)、鈴鴨(すずがも)、頬白鴨(ほおじろがも)、黒鴨(くろがも)、しのり鴨(しのりがも)、海秋沙(うみあいさ)、河秋沙(かわあいさ)、巫秋沙(みこあいさ)、あいさ
鴨打(かもうち)…鴨猟
鴨舟(かもぶね)…鴨を捕る猟師が乗る舟。
鴨道(かもみち)…鴨渡りの経路。
鴛鴦(おしどり)
三冬
水鳥で、冬には人里に降りて来る。
雄は色鮮やかなくちばしと羽毛を持ち、雌雄いつも一緒にいるところから夫婦愛の象徴とされるが、毎年繁殖の相手を変えていることがわかっている。
雄には銀杏の葉に似た羽があり、銀杏羽(いちょうば)と呼ばれる。
千鳥・鵆(ちどり)
三冬
浜辺でちょこちょこ歩き回りながら、砂の中の餌をするどいくちばしで捕らえて食べる。
昔からたくさんの歌に詠まれてきた。
- 星崎の闇を見よとや啼く千鳥 芭蕉
- 貫之が船の灯による千鳥かな 几董
- 上汐の千住を越ゆる千鳥かな 正岡子規
- ありあけの月をこぼるゝ千鳥かな 飯田蛇笏
千鳥足…千鳥の歩くように、足を左右に踏み違えて歩くこと。酒に酔ってふらふら歩く足つきのこと。
また二つ目の意味に、馬の足並みが千鳥が飛ぶ姿のようであること、というのもある。(馬の足並みの音が、千鳥の羽音に似ているところからきているとの説がある。)千鳥掛(ちどりがけ)…糸を斜めに交差させるかがり方で、千鳥が連なって飛ぶ様子からきている。
磯千鳥、海千鳥、浜千鳥、浦千鳥、島千鳥、川千鳥…それぞれその場所にいる千鳥
群千鳥(むらちどり)、友千鳥(ともちどり)…群がっている千鳥
遠千鳥…遠くにいる千鳥
夕千鳥…夕方の千鳥
小夜千鳥(さよちどり)…小夜の千鳥
夕波千鳥…夕方に波際にいる千鳥
月夜千鳥…月夜の千鳥
田鳧(たげり)
三冬
田んぼや干潟などにいる体長30cmほどのチドリ科の鳥。
冬に越冬のために日本に渡ってくる。
頭部に長い冠羽があり、地上を歩きながら餌を探す姿がみられる。
鳰(かいつぶり)
三冬
水辺に水草やアシなどで浮巣(うきす)をつくって住む。
潜水して餌をとるのが得意な水鳥。水に潜っては浮き上がる姿が見られる。
また、親鳥がひなを背中に乗せて泳いでいる姿が見られる。
都鳥(みやこどり)
三冬
ユリカモメ。カモメ科の鳥で、晩秋に飛来してきて、日本の海岸や河口などで冬を過ごす。
(ミヤコドリ科の都鳥とは違う種類。)
名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと
在原業平
冬鷗(ふゆかもめ)
三冬
カモメは日本へ冬鳥として飛来してくるため、冬の季語となっている。
海上の杭や停泊中の船をつなぐ鎖などに、一列に並んで止まっている姿がみられる。
鶴(つる)
三冬
鶴は秋に日本に渡って来て冬を過ごし、春になると北へ帰ってゆく。
例外は北海道に生息する丹頂で、渡りをしない留鳥である。
昔から鶴は鳳凰などとともに、めでたい鳥、瑞鳥(ずいちょう)とされてきた。
「鶴は千年、亀は万年」といわれ長寿の象徴、また願いを込めて千羽鶴が作られる。
凍鶴(いてづる)
三冬
冬の寒さにじっと耐えながら過ごす鶴の姿。
一本の足を羽の中に入れ、もう一本の足で立ち、長い首を翼の下に入れている様子も見られる。
白鳥
晩冬
夏に北方で繁殖をして冬に日本に渡ってくる。
東北や北海道の各地の水辺に棲息する。
世界各地に民話や伝説が残り、日本でも倭建命(やまとたけるのみこと)の伝説に白鳥との関連が見られる。
海雀(うみすずめ)
三冬
チドリ目ウミスズメ科の海鳥の総称。
ずんぐりした姿に首と腹が白く、頭や背中は黒っぽい色をしている。
潜水して小魚などを捕える。
(フグ目、ハコフグ科で、同じ名前の「ウミスズメ」という魚がいる。)
善知鳥(うとう)は同じチドリ目、ウミスズメ科の海鳥。
全体が灰黒色で、くちばしがオレンジ色をしている。