夏の花の季語・初夏(黄、オレンジ、その他)

夏の菊

夏の花の季語、今回は初夏と三夏の花のうち、黄色、オレンジ色、黄緑色などその他の色の花を集めました。

木の花の中には、とても小さくて色も黄緑色などで、注意して見ないと見つけられないほど目立たない花を咲かせているものもあります。

雑草と言われているものも、よく見ると可愛らしい花をつけているものがたくさんあります。

散歩の際にはぜひ花が咲いていないか、木や草花を探してみてください。
そして夏の花たちを見つけたらぜひ一句詠んでみてくださいね。

花色が豊富にある種類も多いので、ここにない場合は他の色の花のページもぜひご覧ください。
夏の花の季語・初夏(赤、ピンク)
夏の花の季語・初夏(白)
夏の花の季語・初夏(青、紫)

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植物

金雀枝(えにしだ)

初夏エニシダ

マメ科の落葉低木で、緑色の細い枝が多数枝垂れ、五月頃に黄色の蝶形の花を咲かせる。

ヨーロッパ、イギリス原産で山野に自生している。
江戸時代に中国を経て渡来した。

金雀花(えにしだ)、金雀児(えにしだ)
  • えにしだの黄色は雨もさまし得ず 高浜虚子
  • えにしだの夕べは白き別れかな 臼田亜浪
  • 金雀枝や日の出に染まぬ帆のひとつ 水原秋櫻子
  • 金雀枝の黄金焦げつつ夏に入る 松本たかし

金糸梅(きんしばい)

三夏キンシバイの花

オトギリソウ科の半落葉小低木で、六月頃に直径5cmほどの黄色い五弁花を咲かせる。
黄色の多数の雄しべが、五つの束になって広がっているのが特徴的である。

名前に梅がついているが、梅の仲間ではない。

  • 朝々の馬場のまはりの金糸梅 長谷川双魚
  • 月の出のなまめくあたり金糸梅 加賀谷杵子

猩々草(しょうじょうそう)

三夏ショウジョウソウ

トウダイグサ科の一年草で、明治の頃に原産地のブラジルより渡来した。

高さは60cmくらいになり、鮮やかな紅色の苞が花序を包んでいる。
花は黄緑色の釣鐘型をしている。

棗の花(なつめのはな)

初夏ナツメの花

ヨーロッパ南部、アジア西南部の原産の落葉小高木。
初夏に芽が出るのでナツメと名付けられた。

初夏に淡い黄色の小花が多数、葉腋に集まって咲く。
その後に黄緑色の実ができ、熟すと暗紅色になる。
(「棗の実(なつめのみ)」は、初秋の季語です。)

  • 蚊柱や棗の花の散るあたり 暁台
  • 屋根石にしめりて旭(ひ)あり花棗 杉田久女

葡萄の花(ぶどうのはな)

初夏ブドウの花

ブドウは品種も多いが、初夏から黄緑色の小さな花を咲かせる。
花はとても小さくて目立たない。

  • 花葡萄甲斐の盆地にあまねき日 村山古郷
  • 訥々(とつとつ)と語り葡萄の花を指す 広瀬直人

胡桃の花(くるみのはな)

初夏クルミの花

日本で山野の川沿いなどに自生するのは主にオニグルミ。
落葉高木で、高さは20mほどにもなる。

五月頃に、葉の付け根から長い穂状の雄花が垂れ下がる。
雌花は枝の先に集まって直立して咲く。

  • のぼり来て富士失ひぬ花胡桃 角川源義
  • 花胡桃さんさんと雲定まらず 広瀬直人
  • ながながと垂れて胡桃の花なりし 五十嵐八重子
  • 沢音やみどりの紐の花胡桃 山田みづえ
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棕櫚の花(しゅろのはな)

初夏シュロの花

ヤシ科の常緑樹で、九州南部原産。
中国原産の「唐棕櫚(とうじゅろ)」に対し、「和棕櫚(わじゅろ)」とも呼ばれる。

幹は直立し枝がなく、暗褐色の繊維に覆われ、上部に柄の長い掌状の葉を出す。
繊維は耐水性に富み、棕櫚縄(しゅろなわ)と呼ばれ、昔から井戸の釣瓶(つるべ)や舟のともづなとして用いられた。

五月から六月頃、黄白色の粟粒のような花が集まって穂状に垂れて咲く。

花棕櫚(はなしゅろ)
  • 梢より放つ光やしゆろの花 蕪村
  • 棕櫚さきて夕雲星をはるかにす 飯田蛇笏
  • 蜘蛛の網(い)の大破に棕櫚の落花かな 原石鼎
  • 棕櫚の花海に夕べの疲れあり 福永耕二

山毛欅の花(ぶなのはな)

初夏

落葉広葉樹で、高さ30mあまりにもなる。
ブナはその葉で雨水を集め、幹を流れ下った水は保水力のある土壌に染み込む。そのためブナの林は緑のダムと呼ばれる。

五月頃に、雌雄同株の小さい花を咲かせる。
雄花は黄色で密生し、雌花は頭状をなし総苞に包まれている。

蔓梅擬の花(つるうめもどきのはな)

初夏

ニシキギ科のつる性落葉低木で、山地に自生している。

五月頃に葉の付け根に黄緑色の小さな花をつける。

  • 蔓ほしいまま無住寺のつるもどき 住田嘉門
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榎の花(えのきのはな)

初夏

ニレ科の落葉高木で、山地に自生し高さはは20mにもなる。
五月頃、新枝の葉腋に淡黄色の小花を咲かせるが、とても小さく目立たない。

昔は一里塚や街道並木に植えられ、緑蔭樹とした。
国蝶であるオオムラサキは夏にエノキに卵を産み、ふ化した幼虫はエノキの葉を食べて育つ。

  • 美しや榎の花のちる清水 白雄
  • 懸巣(かけす)鳴いて榎の花をこぼしけり 大谷句仏

櫟の花(くぬぎのはな)

初夏クヌギの花

ブナ科の落葉高木。
幹から出る樹液には、カブトムシやクワガタが集まる。

船舶や車両材、染料などに用いられるほか、薪炭材や、椎茸の榾木(ほだぎ)としても用いられる。

初夏に黄褐色の雄花が穂のように垂れ下がる。
翌年の秋に実るドングリは、大きく球形をしている。

橡(つるばみ)、いちい、団栗の木(どんぐりのき)
  • 東京の空歪みをり花くぬぎ 山田みづえ
  • 花くぬぎほほじろ遠き瀬音呼ぶ 中川輝子

櫨の花(はぜのはな)

初夏ハゼの花

ウルシ科の落葉小高木。ウルシと同じように、かぶれることがあるので注意。
ウルシと違い樹液は使えないが、実から木蝋が採れるので、和ろうそく作りに用いられる。

初夏に枝先の葉の脇から、黄緑色の花を円錐花序につける。

蠟の木(ろうのき)、山櫨(やまはぜ)、はじの木、はにし

夏菊(なつぎく)

三夏夏の菊

菊には多くの品種があるが、六月から七月頃の暑い時期に咲く種類のものを、夏菊という。
多くは小輪咲きで切り花として市場に出回る。

ユウゼンギク、夏の菊

ユウゼンギク

北アメリカ原産のユウゼンギク、中国原産のエゾギク(アスター)、ヨーロッパ原産のフランス菊など。

夏の菊(なつのきく)
  • 夏菊に露をうつたる家居かな 鬼貫
  • 夏菊に浜松風のたよりかな 支考
  • 夏菊のなにか哀しき話かな 久保田万太郎
  • 夏菊に唐箕(たうみ)の塵のかゝりけり 吉野左衛門
  • 夏菊や雨かがやかに砂しめす 金尾梅の門

竜舌蘭(りゅうぜつらん)

三夏リュウゼツランの花

メキシコ原産の半耐寒性の常緑多年草。
花が咲くのは数十年に一度とも言われ、花柱を伸ばして開花すると、子株を残して枯死する。

種類によっては葉からテキーラを醸造するのに用いられる。
学名から、アガベとも呼ばれる。

  • 竜舌蘭朝焼雲は洋に立つ 中村草田男
  • 死者生者竜舌蘭に刻みし名 西東三鬼
  • 昃(かげ)りても竜舌蘭の花高き 清崎敏郎
  • 浜の朝竜舌蘭は空に咲く 木庭俊子

金蓮花(きんれんか)

三夏キンレンカ

ノウゼンハレン科の一年草。
ハスのような丸い葉に、赤、黄、オレンジ色の花を咲かせる。

花や葉は食用になり、サラダやサンドイッチなどに用いることができる。

凌霄葉蓮(のうぜんはれん)
  • 金蓮花かゞめば金の濃くなりぬ 草間時彦

岩菲(がんぴ)

初夏

ナデシコ科の多年草で、江戸時代に中国から渡来した。
五月から六月頃、茎の頂に花径5cmほどの、ナデシコに似たオレンジ色の花を咲かせる。

和紙の原料となる「雁皮(がんぴ)」は別の植物で、ジンチョウゲ科の落葉低木です。
剪春羅(がんぴ)
  • 花朱き岩菲に我家はるかなり 水原秋櫻子
  • 傘寿わがいと愛づ色に岩菲の朱 富安風生
  • 燃えて燃えて岩菲はかなし藪の中 加藤知世子

姫芭蕉(ひめばしょう)

三夏

バショウ科の多年草で中国原産。
芭蕉に似ているがこれはより小型で、高さは1〜2mほど。

九州南部でよく見られ、夏に鮮紅色、濃黄色の花を開く。

美人蕉(びじんしょう)

瓜の花(うりのはな)

初夏ゴーヤの花

瓜類の花の総称。
胡瓜(きゅうり)、真桑瓜・甜瓜(まくわうり)、白瓜・越瓜(しろうり)、西瓜(すいか)、夕顔(ゆうがお)など瓜類の花のこと。

花の色は黄色が多く、白や黄白色もある。
烏瓜(からすうり)の花は白くて独特の形をしている。

  • 夕にも朝にもつかず瓜の花 芭蕉
  • 美濃を出て知る人まれや瓜の花 支考
  • 雨土をしたゝか揚げぬ瓜の花 西山泊雲
  • さざなみの志賀に見てをり瓜の花 森澄雄

胡瓜の花(きゅうりのはな)

初夏キュウリの花

代表的な夏野菜の一つ、胡瓜は蔓で支柱に絡みつきながら伸び、初夏に葉腋に五裂黄色の花を咲かせる。

雄花と雌花があり、雌花の花弁の付け根には細長い子房があり、受粉すると実になる。
花のついた幼い実を刺身のつまに使う。

家庭菜園などで栽培する場合、胡瓜はうどん粉病に弱いので、接木苗を用いるとよい。
日照が十分だとどんどん収穫できるが、日照不足になると途端に弱ってしまう。

胡瓜(きゅうり)、胡瓜漬(きゅうりづけ)、胡瓜苗(きゅうりなえ)、胡瓜揉(きゅうりもみ)なども夏の季語である。

花胡瓜(はなきゅうり)
  • 生き得たる四十九年や胡瓜咲く 日野草城
  • 月若し胡瓜の花のうすれ頃 佐藤惣之助
  • 積石に沈みし蛇や花胡瓜 中村若沙
  • 野は濡れて朝はじまりぬ花胡瓜 有馬籌子

山椒の花(さんしょうのはな)

初夏サンショウの花

ミカン科の落葉低木で、山地に自生する。
枝にはトゲが多い。

芽を香味料として木の芽和え、木の芽味噌などに用いる。
雌株に生る実は香辛料となる。

蜜柑とともにアゲハチョウの幼虫の食草となっているので、食害されないよう注意が必要。

四月から五月頃、枝の頂に淡黄色の小花を房状につける。
幹や枝材はすりこぎに用いる。

はじかみの花、花山椒(はなさんしょう)
  • はじかみの花や下枝の摘みあらし 岡本圭岳
  • 職替へて何を夢見る花山椒 掛井墨水

小豆の花(あずきのはな)

三夏アズキの花

マメ科の一年草で、古くから栽培されてきた。

夏に黄色の蝶形花を葉腋に数個ずつ咲かせる。
花の後に、細長いさや状の実をつけ、中に小豆ができる。

豆の花(まめのはな)は晩春の季語で、主に春に咲く蚕豆(そらまめ)、豌豆(えんどうまめ)のことを指します。
それ以外の豆は、傍題にあるように、おおむね夏に咲きます。
大豆の花(だいずのはな)、豇豆の花(ささげのはな)、刀豆の花(なたまめのはな)、隠元豆の花(いんげんまめのはな)
  • 閉て住むさゝげの花や八重むぐら 涼菟
  • 藁屋根も小豆の花も翁の里 福山理正

萵苣の花(ちしゃのはな)

初夏チシャの花

キク科の一年または二年草で、古くから栽培されたレタスの一種。
レタスの中でも掻きチシャ、カッティングレタスと呼ばれ、サンチュなどがこれにあたる。

初夏の頃、枝を多く分岐させ、先端に小さく黄色い頭状花を咲かせる。

苣の花(ちさのはな)、苣の薹(ちさのとう)
  • 古里や嫂(あによめ)老いて萵苣の薹 高浜虚子
  • 道滝へ近づくちさの落花かな 大谷句仏
  • ちさの花野川にながれ田植前 水原秋櫻子

滑歯莧(すべりひゆ)

三夏スベリヒユ

スベリヒユ科の一年草で、畑、路傍、空き地などに生える。

茎は淡紅色で多肉質をしていて葉も厚い。
茎は地面を這うように輪状に広がる。

夏に黄色い小さな五弁花をつける。
朝開いて、昼頃には閉じてしまう。

雑草として扱われるが、地域によっては食用に用いることもある。
また馬歯莧(ばしけん)と呼ばれ、民間薬としても用いられる。

馬歯莧(すべりひゆ)
  • 釣るされて一期しまひぬ辷(すべ)り莧 一茶
  • 淋しさや花さへ上ぐる滑莧 前田普羅
  • すべりひゆ雨来ぬ土に花とざす 亀村佳代子

酢漿の花(かたばみのはな)

初夏カタバミの花

カタバミ科の多年草で、庭や路傍などいたるところに生える。
葉はハート形で、三枚の複葉。

夏を中心にほぼ一年中、小さい黄色の五弁花をつける。
花の後には小さな莢をつける。

酸い物草(すいものぐさ)
  • かたばみの花より淋し住みわかれ 三橋鷹女
  • かたばみに雨ぴちぴちと雀の子 矢島渚男
  • かたばみの花大足が踏んで過ぐ 河野友人

車前草の花(おおばこのはな)

初夏オオバコの花

オオバコ科の多年草で、山野、路傍、平地などいたるところに見られる。
踏まれても強く、たくましく成長する。

草の間から花茎を伸ばし、白色の小花を穂状につける。
薬用として種々の効能があるといわれる。

車前草の花(しゃぜんそうのはな)
  • 水車みち車前草はやく濡れにけり 飯田蛇笏
  • 車前草の花のよごれや牧場口 鈴鹿野風呂
  • 話しつゝおほばこの葉をふんでゆく 星野立子

都草(みやこぐさ)

初夏ミヤコグサの花

マメ科の多年草で、野原や路傍に自生している。
初夏から秋にかけて、鮮黄色の蝶形花を二つずつ咲かせる。

花が終わると色が赤く変わるものや、白花のものもある。

  • 白峰の径に海見ゆ都草 本田一杉
  • みやこぐさの名もこころよくねころびぬ 大野林火
  • 横たはる梯子桝目にみやこぐさ 目迫秩父

衝羽根草の花(つくばねそうのはな)

初夏

ユリ科の多年草で、山地に自生する。
草丈は30cmほどで、茎の上に葉を四枚輪生する。

五、六月頃に、葉の中心から淡黄緑色の花を開く。

ツクバネソウの実

ツクバネソウの実

花の後は紫黒色の実をつける。

四枚の葉が羽根つきの羽子に似ているので、その名がついた。

蛇苺(へびいちご)

初夏ヘビイチゴ

野原や路傍などに自生するバラ科の多年草。
茎は地面を這うように伸び、葉は三枚の小葉からなる。

四月頃、葉腋に小さく黄色い五弁花をつけ、夏には紅い実になる。
別名で毒苺と呼ばれるが、毒はない。
ただ汁気も味もなく、おいしくないので、食用にはされない。
(「蛇苺の花」は、晩春の季語です。)

  • 田水満ち日いづる露に蛇苺 飯田蛇笏
  • ふるさとの沼のにほひや蛇苺 水原秋櫻子
  • 蛇苺遠く旅ゆくもののあり 富沢赤黄男

浅沙の花(あさざのはな)

三夏アサザの花

ミツガシワ科の多年草で、池や沼の水面に丸い葉を浮かべ、黄色の五弁花を咲かせる。
根は水底の泥の中に横に這っている。

古くは若葉を摘んで食用にしたので、花蓴菜(はなじゅんさい)と呼ばれた。

莕菜(あさざ)
  • 天龍寺あさざいつぱい咲きわたり 阿波野青畝
  • 舞ひ落つる蝶ありあさざかしげ咲き 星野立子
  • 莕菜咲き水吹く風の逸るなり 小松崎爽青
この記事を書いた人
こよみ

このサイトではテーマごとに季語を集め、画像とともに一目でわかりやすいようにまとめました。季語の持つ多彩な魅力をぜひお楽しみください。

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